2025年はショパンコンクールが開催されます!
まずは,これまでとの変更点や日程,課題曲など,詳細で正確な情報をお届けします!
2025年開催 第19回 ショパン国際ピアノコンクール
ショパン国際ピアノコンクールは,1927年に第1回が開催されたコンクールで,現存する国際ピアノコンクールでは最古のコンクールです。
チャイコフスキー国際コンクール,エリザベート国際コンクールとともに「世界三大コンクール」と称され,世界で最も権威あるコンクールの一つです。
歴代入賞者には,ウラディーミル・アシュケナージ,マウリツィオ・ポリーニ,マルタ・アルゲリッチ,クリスティアン・ツィメルマンなど錚々たる一流ピアニストを輩出してきました。
日本人からも,中村紘子さん,内田光子さん,横山幸雄さんなど,多くのピアニストが発掘されてきました。
前回2021年の第18回大会でも,日本人から反田恭平さんが2位,小林愛実さんが4位に入賞となったことはまだ記憶に新しいです。
日本人が2位入賞となるのは,1970年の内田光子さん以来半世紀ぶり。
日本人最高位タイの快挙でした。
小林愛実さんは2015年ショパンコンクールに続いて2大会連続の本選出場でした。
2015年には残念ながら入賞を逃しましたが,2021年には見事4位に入賞されました。
日本人は2010年,2015年と2大会連続で入賞者がいなかったため,2005年以来16年ぶりの日本人入賞となり,同じ日本人としてうれしかったことが思い出されます。
1955年の第5回以降,5年に1回のペースで途切れることなく開催してきましたが,
2020年の第18回ショパンコンクールはコロナ禍によって開催延期となりました。
2021年に1年遅れでも無事に開催されて本当に良かったと思います。
幻想ポロネーズが本選Finalの課題曲に
今回のショパンコンクールで注目すべき最大の変更点は,本選にピアノソロの演奏が導入されたことでしょう。
従来通り,2曲の協奏曲のいずれかに加えて,協奏曲の演奏前に,幻想ポロネーズを演奏することになりました。
幻想ポロネーズは2010年の第16回大会でも,初の共通課題曲となっています。
ショパンコンクールにとって,というよりも,ショパンを愛するすべての人にとって,幻想ポロネーズはやはり特別な作品ですね。
今回の本選では,最晩年のショパン最後の大作である幻想ポロネーズと,初恋に心をときめかしていたポーランド時代の協奏曲を連続で演奏することになります。
これ,演奏者にとってはかなりやりづらいのではないでしょうか。
協奏曲で盛り上がったあと,幻想ポロネーズをしっとりと演奏するのならわかりますが,
幻想ポロネーズを演奏した後に,協奏曲って・・・
これを演奏プログラムとして成立させるのは至難の業ではないかと思います。
今回の本選はどうなってしまうのでしょうね?
ワルツが1次予選の課題曲に
これまで2次予選で課題とされていたワルツが,1次予選の課題曲となりました。
エチュードも,これまでは1次予選で2曲演奏していましたが,1曲だけに変更となりました。
エチュードの演奏回数が減るのは,コンテスタントにとっては少なからず負担の軽減になると思います。
しかし,エチュードならば演奏技術勝負となるところが,ワルツではセンスの勝負となり,演奏技術の秀でたコンテスタントにとっては,不利になると思います。
ワルツは新しい試みとして1次予選の課題曲となりましたので,審査ではより注目されることになるでしょう。
しかも,今回課題曲として提示されているワルツは,Op.18,Op.34-1,Op.42のたった3曲だけ。
たった3曲のワルツを80名のコンテスタントが演奏することになりますので,
自分の演奏が,他の多くのコンテスタントの演奏と比較されることになります。
これは1次予選に波乱を呼ぶことになるかもしれません。
ワルツはショパンが生前出版したものだけでも8曲,遺作も含めれば演奏可能な作品が19曲もあるというのに,なぜ課題曲をたったの3曲に絞ってしまったんでしょうね。
バラード賞が新設
今大会では特別賞に,バラード賞が新設されています。
1927年の第1回大会にはマズルカ賞しかなかった,ショパンコンクールの特別賞ですが,
- 1965年第7回大会 ポロネーズ賞の新設
- 1980年第10回大会 コンチェルト賞の新設
- 2010年第16回大会 ソナタ賞の新設
この年は共通課題曲となった幻想ポロネーズ賞も授与されました。 - 2025年第19回大会 バラード賞の新設
という歴史を経て,とうとう特別賞が,マズルカ賞・ポロネーズ賞・コンチェルト賞・ソナタ賞・バラード賞の5枠となりました。
バラード賞が新設された影響なのか,1次予選課題曲のバラードのグループからスケルツォ4曲が除外され,代わりにスケルツォは予備審査の課題曲となっています。
2010年は幻想ポロネーズが初の共通課題曲となり,”幻想ポロネーズ賞” が新設されました。
今年は幻想ポロネーズが本選の課題曲となり,初めてピアノソロの作品が本選課題曲となったわけですが,”幻想ポロネーズ賞” は復活しなかったようです。
2005年は1位のラファウ・プレハッチがマズルカ賞,ポロネーズ賞,コンチェルト賞と,当時のすべての特別賞を総嘗めにしましたが,
プレハッチのような天才が今年現れた場合,特別賞5枠総取りなんてこともあり得るわけですね。
ショパンコンクール Youtube公式チャンネル
ショパンコンクールはYou Tubeでライブ配信されるため,
自室にいながら,リアルタイムでコンクールの演奏を満喫することができます!
公式チャンネルへのリンクを貼っておきます。
公式チャンネルでは,2010年開催の第16回,2015年開催の第17回,そして前回2021年開催の第18回のアーカイブも視聴できます。
2021年ショパンコンクール 公式Youtube アーカイブ・データベース
“ショパン データベース” では,公式Youtubeチャンネルのアーカイブのデータベースを作り公開しています。
公式チャンネルにある膨大な演奏アーカイブの中から,
・あの人の演奏だけ
・日本人の演奏だけ
・エチュードだけ
・Op.10-1だけ
のように,聴きたい曲だけを抽出して視聴できるようになっています。
以下にリンクを掲載しますので,ぜひご利用ください。
初めて利用される方は予備審査アーカイブデータベースの記事に,データベースの使い方や検索・抽出のコツなど詳細を載せています。
開催日程
- 4/23
~5/42025年 4月23日 ~ 5月4日
Preliminary Round
予備審査事前選考で選出された約160名が参加します。
- 10/22025年 10月2日
Inauguration of the Competition
オープニング コンサートおそらく前回優勝者のブルース・リウのコンサートが開催されると思います。
- 10/3
~10/72025年 10月3日 ~ 10月7日
Round one of the Competition
1次予選予備審査から約80名が選出され,参加します。
- 10/9
~10/122025年 10月9日 ~ 10月12日
Round two of the Competition
2次予選約40名が参加。
- 10/14
~10/162025年 10月14日 ~ 10月16日
Round three of the Competition
3次予選約20名が参加。
- 10/172025年 10月17日
Commemoration of the 176th
anniversary of Chopin’s death
ショパン没後176周年記念式典10月17日はショパンの命日にあたるため,追悼コンサートやミサが行われます。
- 10/18
~10/202025年 10月18日 ~ 10月20日
Final
本選予選を通過した原則10名のコンテスタントが本選に参加します。
ワルシャワ・フィルハーモニー管弦楽団との共演になります。 - 10/21
~10/232025年 10月21日 ~ 10月23日
Prize-winners’ Concert
入賞者コンサート
開催規定
ショパンコンクールは事細かく規定が定められています。
ここでは要点に絞って掲載します。
開催地 | ワルシャワ 国立フィルハーモニーホール |
参加資格 | 1995年から2009年までに生まれ,規定の条件を満たすプロレベルのピアニスト |
予備審査 | 原則として160名の候補者を予備審査に選出する |
予選・本選 | 原則として,1次審査には80名,2次審査には40名, 3次審査には20名,本選には10名が選出される。 |
出場順 | 2025年9月30日に公開抽選 |
参加資格を得ること自体が難しい
世界で最も権威あるコンクールだけに,簡単に参加することはできません。
様々な条件をクリアした,実力と実績のあるピアニストでなければ,予備審査にすら参加することが許されません。
事前選考に応募する際に,写真や生年月日の証明書の他に,
- 略歴
- 音楽学校および主要コンクールの成績証明書
- 候補者の過去3年間の芸術活動を証明する書類
- 教育学者や優れた音楽家による推薦状2通
- 指定された課題曲をビデオ撮影したファイル
これだけの書類をそろえて提出しなければなりません。
ビデオ撮影も,1~2曲の録画で済むような簡単なものではなく,
- 前奏曲集Op.28から6曲
- 練習曲集Op.10,25から2曲
- ノクターンから1曲
- バラードから1曲
これだけのプログラムを,全曲を通してノーカットで収録したものを提出しなければなりません。
これだけの書類が揃えられるピアニストって,既にプロのピアニストとして活躍できるレベルです。
そうでなければ,応募すらできないということです。
例えこれだけの書類を揃えて応募したとしても,応募が受理されなければ,予備審査に参加すらできません。
前回,2021年に開催された第18回ショパンコンクールでは,500人以上が事前選考に応募しましたが,予備審査に参加できたのはたったの164名でした。
なお,権威のある国際コンクールで上位入賞した経歴があれば資格認定手続きが簡略化されます。
中には予備審査を免除され,いきなり1次予選に参加するコンテスタントもいます。
賞金
1位 | 6万ユーロと金メダル |
2位 | 4万ユーロと銀メダル |
3位 | 3万5千ユーロと銅メダル |
4位 | 3万ユーロ |
5位 | 2万5千ユーロ |
6位 | 2万ユーロ |
他の本選出場者 | 8千ユーロ |
前回,2021年は1位が4万ユーロ,2位が3万ユーロ,・・・,6位が7千ユーロでした。
賞金もインフレしていますね・・・
特別賞
上記賞金の他に,次の特別賞が授与される場合があります。
- コンチェルト賞
- マズルカ賞
- ポロネーズ賞
- ソナタ賞
- バラード賞 *新設
今回,バラード賞が新設されています。
課題曲 概要
課題曲 詳細
予備審査 課題曲
- エチュードの2曲はaグループ,bブループの順に演奏。
以外はどのような順番で演奏してもよい。 - 事前のビデオ審査で演奏した曲目を再度選ぶことができる。
ただし,ビデオ審査や予備審査で演奏したエチュードは,その後の予選では演奏することができない。
1次予選 課題曲
- 演奏順は自由。
- エチュードは,ビデオ審査や予備審査で演奏した曲を選ぶことはできない。
- エチュード以外の作品は,ビデオ審査や予備審査で演奏した曲を再度選ぶことができる。
ただし,その後の予選では同じ曲を演奏することができない。
ワルツが1次予選の課題曲となるのは,新しい試みです。
エチュードも,これまでは1次予選で2曲演奏していましたが,1曲だけに変更となりました。
また,スケルツォが課題曲から除外されてしまったため,今年は予選でスケルツォの演奏をほとんど聴くことができなくなるでしょう。
2次予選 課題曲
- 演奏時間は40~50分
- 演奏順は自由。ただし前奏曲集は作品番号順に演奏。
- ポロネーズの課題としてOp.26を選んだ場合は,Op.26-1とOp.26-2を2曲とも作品番号順に演奏。
- 制限時間を超過した場合は,審査員は演奏を中止させることができる。
3次予選 課題曲
- 演奏時間は45~55分
- 演奏順ば自由。ただしマズルカは作品番号順に演奏。
マズルカOp.33とOp.41は原典版の作品番号順に演奏。 - ソナタの提示部の繰り返しは省略することが推奨される。
- 制限時間を超過した場合は,審査員は演奏を中止させることができる。
本選 課題曲
- 幻想ポロネーズ 変イ長調 Op.61
- ピアノ協奏曲 ホ短調 Op.11 または ピアノ協奏曲 ヘ短調 Op.21 のいずれか1曲
*ワルシャワ・フィルハーモニー管弦楽団との共演
幻想ポロネーズは,初めて本選で課されるピアノソロ作品となりました。
審査方法
コンクールの審査結果は,大げさではなく,コンテスタントのその後の人生に大きな影響を与えます。
特に,ショパンコンクールの審査結果はピアニストにとって大きな意味を持ちます。
そのため,審査は複雑なルールが定められ,厳正に審査が行われています。
審査方法も公開されています。
例えば,予選の審査方法をおおまかに要約しますと,以下のようになります。
ショパンコンクールの審査規定は本当によく考えられています。
これ以上ないぐらい,厳正で公正な審査規定です。
前回第18回大会の予選の採点結果についてまとめた記事がありますので,よければこちらもご覧ください。
まずは4月23日~5月4日の予備審査が待ち遠しい
ということで,ショパン愛好家にはたまらない,5年に1回のコンクールがいよいよ近づいてきました。
公式Youtubeチャンネルのアーカイブでも見ながら,まずは予備審査を心待ちにしようと思います。
今回は以上です!