◆当サイト管理人の演奏です。2021年5月録音。
ショパンのエチュードはメトロノームの速度指定が記譜されている!
ショパンはOp.10とOp.25のすべての練習曲にメトロノームによる速度指示を書いています。
これはヨーゼフ・クリストフ・ケスラーの作品からの影響だと言われています。
ヨーゼフ・クリストフ・ケスラーはドイツのピアニスト・作曲家です。
1829年,ショパンが19才のとき,ショパンはワルシャワに来ていたケスラーの音楽に触れています。
ケスラーは1827年に作曲した前奏曲集をショパンに献呈しており,そのお返してとして,ショパンも前奏曲集のドイツ版をケスラーに献呈しています。
*前奏曲集Op.28の平行短調を挟みながら5度ずつ上がっていく配置も,ケスラーの影響だと言われています。
24曲の練習曲全てに,ショパン自らメトロノームによる速度指定を記譜しているというのは,
特筆すべき特徴です。
にも関わらず,練習曲集へのメトロノームによる速度指定についてあまり議論されることがありません。
この記事では,ショパン自身が記譜したメトロノームによる速度指定について,
詳しく解説いたします!
ショパンのエチュードに記譜されたメトロノームによる速度指定
ショパンの指定した速度指示を表にまとめます。
作品を形成する最小構成要素が,1分間に鳴らされる回数も記載しました。
例えば,Op.10-1は4分音符=176なので,最小構成要素の16分音符は1分間に704回鳴らされることになります。
しょくぱん
ここでは便宜的に,
やのように1拍を3等分した音符を12分音符,
やのように1拍を6等分した音符を24分音符,
と呼ぶことにします。
クラシックでは一般的な呼び方ではないですが,音楽ゲームではこの呼び方が使われています。
しょくぱん
下記表ですが,いくつか計算ミスがありました。
2021年8月23日修正済みです。
- Op.10-3『別れの曲』
1分間あたりの打鍵回数を400回から200回に修正 - Op.10-10
最小構成要素を12分音符から8分音符に修正 - Op.25-12『大洋』
1分間あたりの打鍵回数を320回から640回に修正
Op. | 調性 | 速度指定 | 練習課題(訓練音型) | 最小構成要素の速さ |
10-1 | ハ長調 |
16分音符 |
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10-2 | イ短調 | 16分音符 576回/分 |
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10-3 | ホ長調 | 16分音符 200回/分 |
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中間部 | ||||
*実際はもっとゆっくり演奏する。 | ||||
10-4 | 嬰ハ短調 | 16分音符 704回/分 |
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10-5 | 変ト長調 | 24分音符 696回/分 |
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10-6 | 変ホ短調 | 16分音符 414回/分 |
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*実際はもっとゆっくり演奏する。 | ||||
10-7 | ハ長調 | 16分音符 504回/分 |
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10-8 | ヘ長調 | 16分音符 704回/分 |
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10-9 | ヘ短調 | 16分音符 576回/分 |
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*実際はショパン指定の速さよりはややゆっくり演奏する。 | ||||
10-10 | 変イ長調 |
8分音符 |
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10-11 | 変ホ長調 | 8分音符 152回/分 |
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10-12 | ハ短調 | 16分音符 640回/分 |
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25-1 | 変イ長調 | 24分音符 624回/分 |
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25-2 | ヘ短調 | 12分音符 672回/分 |
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25-3 | ヘ長調 | 8分音符 240回/分 |
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25-4 | イ短調 | 8分音符 320回/分 |
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25-5 | ホ短調 | 8分音符 368回/分 |
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中間部 | 12分音符 504回/分 |
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25-6 | 嬰ト短調 | 16分音符 552回/分 |
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25-7 | 嬰ハ短調 | *序奏 | ||
1小節目 | 8分音符 132回/分 |
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*実際はもっとゆっくり演奏する。 | ||||
25-8 | 変ニ長調 | 12分音符 414回/分 |
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25-9 | 変ト長調 |