前奏曲 Prelude Op.28-10 嬰ハ短調

前奏曲

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※当サイト管理人,”林 秀樹”の演奏です。2020年11月25日録音。
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ショパン 前奏曲 Op.28-10 概要

ショパンが多用した嬰ハ短調

ショパンは嬰ハ短調の作品を多く残しています
その数は15曲にのぼります。

しかも,15曲中14曲には作品番号がつけられていて,しかも13曲は生前出版。
どれも主要作品ばかりです

前奏曲集の第10番,Op.28-10も嬰ハ短調で書かれています。

第9番,第11番とともに,前奏曲集の中では特に目立たない作品です。
しかし,たった30秒ほどの曲ですが,魅力的な作品です。

魅力的なマズルカ

急下降するフレーズと,合間に挿入されるマズルカ風の合いの手の対比が鮮やかです。
駆け下りるフレーズの低音部の伴奏もマズルカ風のリズムになっています。

24の前奏曲集という大曲の中の一曲として,一瞬で過ぎてしまいますが,
短いながらも,心に残る秀作です。

ショパン 前奏曲 Op.28-10 構成

  • Allegro molto;非常に速く
    • 偶数番は短調の曲が続きます。
      第2番から第6番まではLentoやLargoの遅い曲が続きました。
      第8から18番まではAllegroやPrestoなど速い曲が続きます
  • 4分の3拍子
    • 第7番と同じく,4分の3拍子のマズルカです。
  • 冒頭にleggiero;軽く優美に
    • 次の第11番は冒頭に「legato;音をつなげてなめらかに」の指示があり,対照的です。
  • 強弱記号がいっさい書かれていない
    • 前奏曲集の中で,強弱記号がひとつも書かれていないのは,第10番と第11番だけです。

たった18小節,30秒ほどの小品です。
起(4小節)・承(4小節)・転(4小節)・結(4小節+2小節のコーダ)のわかりやすい構成です。

芸術的でありながら,難解ではなくわかりやすい
ショパンの作品の魅力の一つです。

ショパン 前奏曲 Op.28-10 版による違い

たった18小節の小品で,自筆譜も丁寧に書かれているため,
各版とも(めずらしく)ほとんど違いがありません。

18小節目,F(♯)?G(♯)?

最後の小節です。
16分音符の中音域の音はF(♯)が正解です。

ドイツ初版,そしてコルトー版は間違えてG(♯)となっています

自筆譜を見ると,確かにG(♯)と見間違えても仕方がないですね。

ショパン 前奏曲 Op.28-10 自筆譜を詳しく見てみよう!

全景

1ページ4段におさめられています。

たった18小節の小品なので,紙面に余裕があり,見やすいですね。

冒頭

  • ローマ数字のⅩ
  • Allegro molto
  • leggiero
  • ショパンの自筆譜では馴染み深い,横に長いデクレッシェンドのようなアクセントが並んでいます。
  • いつものように,ペダル指示も丁寧です。

4小節目 訂正の跡

4小節目,2拍目の和音が書き直されています。
元の和音は丁寧に塗りつぶされているため読み取れないですね。
気になります・・・

11小節目 小節まるごと訂正

11小節目がまるごと塗りつぶされて,書い直されています。
丁寧に塗りつぶされているため,元々がどうだったのか読み取れないですね。

16~18小節目 アーティキュレーションの訂正

スラーの書き直しの跡が残っています。

左手低音部にも,書き直しの跡が残っています。

ショパン 前奏曲 Op.28-10 演奏上の注意点

leggiero;軽く優美に

冒頭に「leggiero;軽く優美に」の指示です。
leggieroはショパンが好んで用いた発想記号のひとつですが,
前奏曲集中では,leggieroの指示が書き込まれているのは第3番と第10番だけです。

第11番には「legato;音をつなげてなめらかに」の指示があります。
第10番のleggieroと第11番のlegatoの対比を意識しましょう。

決してレガートにはならないように,ひとつひとつの音の粒を際立たせるように演奏します。
コロコロと転がるような,粒の揃った音で演奏できるように練習しましょう。

強弱記号がまったく書かれていない

強弱記号がまったく書かれていません
前奏曲集の中で,強弱記号がひとつも書かれていないのは,第10番と第11番だけです。

第11番にはクレッシェンドやディミヌエンド( < や > )が書かれていますが,
第10番にはクレッシェンドやディミヌエンドさえ書かれていません

スラーとアクセントによるアーティキュレーションは丁寧に書き込まれています。

  • 音が高くなるときはクレッシェンド
  • 音が低くなるときはディミヌエンド
  • フレーズはクレッシェンドではじまり,ディミヌエンドで終わる

といったことに気をつけると,自然に音楽が流れます

全体的にp(ピアノ)で演奏するのが,この曲の曲想に合うと思います。

上の譜例のように

  • 7小節目でいったんf(フォルテ)にして,9小節目でp(ピアノ)にもどす
  • 15小節目でf,16小節目の3拍目にスフォルツァンド,そして17小節目でpにもどす

というのが自然な演奏ではないかと思います。

5連符ではなく,”3+2”

急下降するフレーズが4回でてきます。

速いテンポなので,明確に聴き分ける(弾き分ける)のは難しいですが,
すべて5連符ではなくて,”3連符+2音”で書かれています。

5連符で演奏する方が難しいので,大丈夫だと思いますが,
5連符で演奏してしまうと,だらだらと流れてしまってメリハリがなくなります。

左手アルペッジョ

ショパンの左手のアルペッジョは”先取り”して演奏します。
ショパンの装飾音で”先取り”するのはめずらしいので注意しましょう。

詳細は下の参考記事をご覧ください。

7小節目 左手下からのトリル

第9番でも出てきましたが,第10番でも低音部の”下からのトリル”が出てきます。

ショパンの下からのトリルは拍と同時に弾きはじめます
これには例外がありません。

複前打音を拍と同時に演奏すると主和音と激しく衝突します。
この不協和音はショパンが意図的に仕掛けたものです。

複前打音を先取りして不協和音を避けてしまっては,ショパンの意図に反することになります。

ショパン 前奏曲 Op.28-10 実際の演奏

当サイト管理人の演奏です。

※当サイト管理人,”林 秀樹”の演奏です。2020年11月25日録音。
◆Op.28-10のみ再生


◆24曲全曲再生リスト

本来,前奏曲集は24曲全曲を通して演奏するべきなのですが,今回は各曲の解説が目的なので,1曲ごとに区切って演奏を公開していきます。

ショパンの意図を忠実に再現しようとしています。
(なかなか難しいですが・・・)

ぜひ,お聴きください!

今回は以上です!

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