※他の曲の解説へのリンクや,作品全体の解説はこちらへ。
※当サイト管理人,”林 秀樹”の演奏です。2020年11月25日録音。
◆Op.28-24のみ再生
◆24曲全曲再生リスト
ショパン 前奏曲 Op.28-24 概要
前奏曲集の最後を飾る大作
いよいよ”24の前奏曲”の最終曲となりました。
演奏時間約3分,ドイツ初版やイギリス初版では4ページにわたる大作。
最後を飾るにふさわしい,壮大な力作です。
旋律も伴奏も,ニ短調の主和音だけで構成されている
第23番の余韻を打ち破るような迫力の低音部伴奏から始まります。
ニ短調の主和音である,D音(レ),F音(ファ),A音(ラ)の3つの音だけからできている分散和音による伴奏です。
伴奏が主和音の3つの音の分散和音でできている,と聞くと,モーツァルトやハイドンなど古典派の音楽のように思えます。
実際は,その分散和音が,なんと12度もの音域に広がっており,その響きは原始的でありながら同時に前衛的です。
低音部の広い音域をリズミカルに打ち鳴らす伴奏は,太古の儀式に遭遇したかのような興奮をもたらします。
まるでスクリャービンの音楽を先取りしているかのようです(スクリャービンがショパンの音楽を模倣しただけかもしれませんが)。
さらに驚くことに,まったく同じ分散和音による伴奏が,冒頭1小節目から,なんと10小節目まで続きます。
同じ音型を繰り返すだけなのに,退屈などころか,繰り返されば繰り返されるほど,気持ちが昂ぶり熱狂の渦にどんどん巻き込まれていきます。
これはまるで,ライヒのミニマル音楽を先取りしているかのようです。
さらにさらに驚くべきことに,伴奏だけでなく,旋律(メロディ)もニ短調の主和音であるレ・ファ・ラだけでできています。
しかも,主和音の3つの音を,ラ→ファ→レ,→ファ→ラ→レと,1音ずつ順番に下がったり上がったりするだけの旋律です。
音楽理論をインストールされたばかりの,生まれたての人工知能がはじめて作曲したのではないかというぐらい,単純なメロディです。
人類史上最高のメロディメーカーだったショパンですが(当サイト管理人の個人的見解です),
このメロディは,普段ショパンが書くような,歌うような情緒あふれるメロディとは違います。
原始の細胞が煽動されるような,プリミティブな音楽です。
ペダルベタ踏み
ペダルは終始ベタ踏み状態で,4~5小節のあいだペダルを踏んだままにする場面がたくさん出てきます。
ペダルをベタ踏みする効果によって,凄絶な音響世界が鳴り響きます。
この音響世界は,前奏曲集が作曲された19世紀初頭(前奏曲集の完成は1839年1月)の人々からすると,
想像を絶する,未知の音響世界だったと思われます。
最近(今,2021年の5月に記事を書いています)は,ペダルをあまり使用せずに,乾いた軽い音で,高速に弾き飛ばすのが流行っています。
この作品は,ペダルを深く・長く踏み込むことで,ショパンが思い描いた音響世界への扉が開きます。
ピアノ上級者ほど,音が濁るのをきらい,ペダルベタ踏みは初心者っぽくてかっこ悪いと感じるでしょうが,勇気を出して,ペダルを奥まで踏み込んでみてほしいと願います。
必死に手を伸ばすも引きずり降ろされる
必死に手を伸ばして這い上がろうとするような旋律が感動的です。
もがき苦しみ,必死に手を伸ばすも,運命の力で容赦なく引きずり降ろされます。
それでも必死にあらがって,微かに残る希望と意志を掴もうとするかのように駆け上がっていくスケールとアルペジオが悲痛の叫びに聞こえます。
46小節目,嵐の中,台風の目の中に入ったような一瞬の静寂が訪れます。
全ての力を使い果たし,膝を折り,肩を落として失意に沈みます。
しかし,最後の力を振り絞るように,メロディがオクターブに拡大され,
力強く上昇を3回繰り返し,必死の抵抗を見せます。
ところが,55小節目,ff;フォルテシモとなり,当時のピアノの最高音から中音域まで,一気に下る3度の半音下降で,壁が崩れ落ち,すべてが崩壊します。
61小節目にfff;フォルテシッシモとなり,繰り返し奈落の底へ落とされ続けます。
2度にわたって,当時のピアノの最高音から引きずり降ろされたあと,
再びfff;フォルテシッシモが書き込まれ,最後は当時のピアノの最低音に近いD音(レの音)まで引きずり降ろされ,
最低音のD音を3回強打して作品が終わります。
24曲からなる曲集の最後にふさわしい,圧倒的な最後です。
fff;フォルテシッシモ
ショパンはfffはめったに記譜しません。
ショパンは24曲の前奏曲集の中で,fffは第18番と第24番にだけ,3回しか書き込んでいません。
第18番では,最後の和音にfffが記譜されているだけでした。
第24番では,曲中にfffが2回書き込まれています。
マジョルカ島でショパンが使ったピアノ
マジョルカ島のヴァルデモーザ修道院には,ショパンが使用したピアノが展示されています。
ショパンがマジョルカ島で使用していたピアノの音域は,C1からF7までの78鍵でした。
この作品で使われている音域を,図示しました。
当時のピアノの音域のほぼ全てが使われていることがわかります。
左手の伴奏音型は常に12~13度もの広い音域が使われています。
下降スケールは現代ピアノで演奏していても強烈な印象が残りますが,
当時のピアノでは,ピアノの最高音から下降していたのだと思うと,さらに強烈です。
作品の最後,73小節目からは,当時のピアノの音域のほぼ全てを一気に下降していたことがわかります。
そして最後に打ち鳴らされる3回のD音は,当時のピアノのほぼ最低音でした。
19世紀初頭,ピアノは開発途上にあった最新の楽器でした。
ペダルベタ踏みの効果もあって,当時の最新機種である78鍵のピアノの全音域が鳴り響きます。
当時の人々にとって,驚愕の音響世界であったことでしょう。
ショパンがめったに使わなかったニ短調
258曲もの作品を残したショパンですが(詳しくはショパンの作品数~ズバリお答えします!~を参照ください),ニ短調の作品はたったの5曲しか遺していません。
しかも,生前出版された作品は,この前奏曲Op.28-24ただ一曲だけです。
すべての調性で曲集を作るという,前奏曲集の企画がなければ,ショパンのニ短調の作品には出会うことがなかったかもしれないのです。
めったに聴くことができない,ショパンのニ短調を,存分に味わいましょう。
ショパン 前奏曲 Op.28-24 構成
ニ短調 アレグロ・アパッショナート,8分の6拍子
起承転結を軸にした分かりやすい構成
2小節の前奏や経過句と,4小節のかたまりで構成されています。
- 前奏 2小節
- [ 起]A;ニ短調 (起 4小節 ─ 承 4小節 ─ 転 4小節 ─ 結 4小節)
- 経過句 2小節
- [承]A’;イ短調 (起 4小節 ─ 承 4小節 ─ 転 4小節 ─ 結 4小節)
*A部とA’部は移調しただけで,ほとんど同じ
- [承]A’;イ短調 (起 4小節 ─ 承 4小節 ─ 転 4小節 ─ 結 4小節)
- 経過句 2小節
- [転]B;転調を繰り返す (起 4小節 ─ 承 4小節 ─ 転 4小節 ─ 結 4小節)
- 経過句 2小節
- [結]C (起 4小節 ─ 承 4小節 ─ 転 4小節 ─ 結 4小節)
- コーダ
ショパン 前奏曲 Op.28-24 版による違い
5,23小節目,メロディの間違い
なんとドイツ初版はメロディを間違えています。
この間違いが残っている楽譜は,当サイト管理人は1度も見たことがありませんが,
ミクリ版も間違えているので,後世の出版譜に受け継がれてしまっている可能性は十分にあります。
楽譜購入の際は気をつけましょう。
17小節目,音価の間違い
ドイツ初版では,17小節目の8分音符が4分音符になってしまっています。
なお,同様な箇所の35小節目では間違えていません。
31小節目,音符の間違い
ドイツ初版は,左手伴奏の音を間違えています。
なんと,この間違いはミクリ版やコルトー版といった権威ある出版譜に引き継がれ,
今でもこの間違いが残ったままの楽譜がたくさん出版されています。
42小節目,音の間違い
各初版とも,左手伴奏の音を間違えています。
しかも,それぞれ間違え方が違います。
51小節目,fがffになっている
ドイツ初版,イギリス初版では,f;フォルテが,ff;フォルテシモになってしまっています。
61小節目,fffがffに
61小節目には,ショパンがめったに使わないfff;フォルテシッシモが記譜されています。
フランス初版とイギリス初版ではff;フォルテシモになってしまっています。
66小節目,sempre ff がない
フランス初版,イギリス初版では,sempre ffの指示がなくなってしまっています。
ショパン 前奏曲 Op.28-24 自筆譜を詳しく見てみよう!
全景
第23番の続きから書かれていて,記譜は3ページ半にわたっています。
最初のページは,裏からのインクが濃く滲み出ています。
左手が同じ音型を繰り返すため,繰り返し記号が多数使われています。
訂正の跡が多数遺されており,推敲を重ねたショパンの苦悩の跡が読み取れます。
筆圧(?)も濃く,その譜面からは鬼気迫る迫力を感じます。
1~4小節目
冒頭にAllegro appassionatoの指示。
8分の6拍子。
2小節目以降,左手伴奏は繰り返し記号で省略されており,9小節目まで繰り返し記号が続きます。
ペダルは4小節にわたってベタ踏みの指示です。
冒頭のメロディから訂正の跡が遺っています。
執拗に塗りつぶされているため,もとは読み取れません。
5~6小節目,ペダルベタ踏みの指示
senza(ペダルを離す記号)が消されており,これにより,
6小節目で踏まれたペダルは10小節目までベタ踏みの指示になりました。
このように,ショパンは意図的にペダルをベタ踏みするように指示しています。
7~9小節目
7小節目は,1小節まるごと訂正されています。
大きくバツが見えていますが,これは裏のページが滲んだものです。
10~11小節目
左手伴奏が,大きく訂正されています。
12~14小節目,タイが消されている
一度書いたタイを消し,スラーも訂正しています。
もともとはC音をタイでつないで,スラーも14小節目の1拍目まで伸ばす予定だったようです。
さらに2箇所,何かを消した跡が遺っていますが読み取れません。
気になります・・・
15小節目には当時のピアノの最高音,F7音が登場です。
16小節目
左手伴奏がまるごと訂正されています。
18~20小節目,タイが消されている
18小節目,タイが消されています。
14小節目と同じで,上昇スケールの1音目は,もともとタイでつなぐ予定だったようです。
20小節目のsenzaが消され,これにより,
19小節目から23小節目まで,5小節にわたってペダルをベタ踏みすることになります。
25~26小節目
25小節目では,上側に書いたスラーが消されています。
下側に書いたスラーはのこっています。
上のスラーを書いて,それを消してから下にスラーを書き直したのか,
下のスラーを書いていて,不要な上のスラーを書いてしまったから消したのか,
どちらかでしょう。
26小節目には訂正が3箇所ありますが,どれも元が読み取れません。
30~32小節目,タイが消されている
ここでもタイが消されています。
14,18小節目で同じですね。
30~31小節目ではスラーを消した跡が2箇所遺っています。
34~35小節目
4箇所の訂正跡が遺っています。
小節間の訂正はスラーを消したことがわかりますが,
それ以外は読み取れません。
36小節目,タイが消されずにのこされた
今までとは違い,ここのタイはのこされています。
細かな訂正の跡がいくつかのこっています。
37~38小節目
41~42小節目,メロディのリズムを変えた?
ここでもsenzaが消されています。
クレッシェンドの左に,何かを濃く消している部分があります。
元は読み取れません。いったい何が書かれていたのでしょう・・?
41小節目はメロディーに変更が加えられています。
47小節目と51小節目にも同様な訂正の跡が遺っています。
もともとは,上の譜例のようなリズムのメロディだったのかもしれません。
なお,51小節目にショパンが記譜したf;フォルテの筆跡からは,
鬼気迫る迫力を感じます。
61小節目,鬼気迫る筆跡のfff
ショパンがめったには書き込まない,fff;フォルテシッシモを記譜しています。
その筆跡には力がこもっていて,鬼気迫る迫力があります。
66,70小節目,最高音のF7
当時のピアノの最高音,F7音から,一気に下降する場面です。
凄絶な24曲の前奏曲集の最後
24曲の前奏曲集の最後は,凄絶なものとなりました。
ここでもfffが書き込まれています。
なんども解説しましたが,fffは,ショパンにとっては非常にめずらしい,特別な指示です。
当時のピアノの鍵盤の,ほとんど端から端へ,一気に崩れ落ちていき,
最低音のD音が3回打ち鳴らされます。
3回打ち鳴らされる最低音のD音は,一際大きく濃く記譜されており,
身の毛がよだつような凄まじい迫力があります。
執拗に濃く塗りつぶされた訂正の跡も遺っており,
訂正の跡からも鬼気迫るものを感じます。
ショパン 前奏曲 Op.28-24 演奏上の注意点
左手伴奏音型の2音目は4分音符
左手の伴奏音型をよく見ると,2番目の音に符幹が伸びています。
2番目の音は4分音符で,長く指で抑えたままにします。
ペダルはベタ踏みにしていますから,この音を指で抑えていても,すぐに離してしまっても,
耳ではその違いがわかりません。
にも関わらずショパンがこのような記譜をのこしていることには理由があります。
これはショパンの演奏メソッドの一つです。
広い音域の分散和音は,音を外しやすく,技術的に難しいです。
しかも同じ音型を繰り返していますから,一つでも音を外すとかなり目立ちます。
ペダルをベタ踏みにしていますから,音を外すと音がにごります。
分散和音の真ん中の音を2の指(人差し指),または3の指(中指)で抑えたまま,
その指を支点にして手や腕全体を支えることで,
手・腕が安定し,音を外しにくくなります。
同じような広い音域の分散和音が,Op.28-5の右手にも出てきます。
ペダルはベタ踏み
最初から最後まで,ペダル指示のない小節はありません。
終始ペダルは踏んだままになります。
ショパンがペダルの踏みかえを指示したところで,赤,青と色を入れ替えて図示しました。
ペダルを踏みかえずに4~5小節にわたって,ペダルをベタ踏みする箇所が多数あります。
ペダルをベタ踏みしてしまう,というのは初心者にありがちな失敗の一つです。
ピアノ上級者ほど,ペダルのベタ踏みは避けるでしょう。
しかし,一度これまでの常識を捨てて,ショパンの指示通りにペダルをベタ踏みにしてみてください。
しかも,ハーフペダルではなく,奥まで思いっきり踏み込んでください。
凄絶な音響世界への扉が開かれます。
特に,ピアノ経験者がペダルを踏みかえてしまうポイントを黄色枠で図示しました。
複前打音やトリルの後のターン
装飾音があるところは,普通ならペダルを踏みかえて音が濁らないようにするのが常識です。
ピアノ上級者は,意識しないとペダルを踏みかえてしまうと思います。
ペダルを踏みかえてしまうことで,膨れ上がった音の響きが,そこで途絶えてしまいます。
しっかりと意識的にペダルを踏み続けてください。
con forzaのところも同様です。
fからpに変わるところ
ずっとf;フォルテだったところに,一瞬,p;ピアノが出てきます。
音量が一気に変わる場面ですから,これもピアノ上級者は無意識にペダルを踏みかえてしまうと思います。
ペダルを踏んだまま,打鍵の音量を小さくすることで,
それまでのフォルテの音響の余韻が残り,
すばらしい音響効果が発揮されます。
その後,メロディがオクターブに拡張され,クレッシェンドからフォルテへ戻る場面も同様です。
3度の下降スケールの前
ペダルは踏みかえずに,ペダルを踏み込んだままにします。
世界のすべてが崩壊するような場面が,より劇的になります。
最後,最低音のD音を3回鳴らす前
ここは,ほとんどの演奏者が,D音を鳴らす前にペダルを踏みかえてしまっています。
直前の下降スケールも,ペダルなし,もしくはハーフペダルで演奏する演奏者がほとんどです。
ここは,73小節目から,最後のD音の響きが消えるまで,ダンパーペダルを奥まで踏み込み続けることで,唯一無二の音響世界が現れます。
装飾音
ショパンの作品にとって,装飾音は重要です。
そして,装飾音の演奏法を間違えている演奏者がほとんどです。
ショパンの装飾音については,8つの記事にまとめていますので,ぜひご覧ください。
7,25小節目の装飾音は先取り
ショパンがめったに使わなかった転回ターンが出てきます。
転回ターンは,ショパンがあまり使わなかった装飾音で,
当サイト管理人もどう演奏するべきか,明確な答えは出せていません。
ノクターンのように,旋律を歌い上げるようなときは,拍と同時に演奏することで,旋律に「こぶし」や「しゃくり(ベントアップ)」の効果をもたらします。
しかしOp.28-24の旋律は,そもそも「歌うような」旋律ではありません。
先取りで演奏することで,主音を鋭く,強く表現することができますので,
ここでは装飾音を先取りで演奏し,主音を拍の頭にあわせるのが良いのではないかと思います。
10,28小節目,「下からのトリル」は拍と同時に。
ショパンの「下からのトリル」は拍と同時に演奏します。
38小節目,複前打音は拍と同時に。
ショパンの複前打音は,拍と同時に演奏します。
50小節目,前打音は拍と同時に。
ショパンの前打音も,拍と同時に演奏します。
カデンツァ
スケールによるカデンツァが数回出てきます。
テンポを保とうとしすぎない
テンポを保とうとして高速に弾き飛ばすと乱暴な演奏になってしまいます。
ここは少しテンポが遅くなっても構いませんから,
一つひとつの音の粒が感じられるように丁寧に演奏しましょう。
少しテンポが遅くなるほうが,音楽が自然に流れます。
前半はアッチェレランド,後半はリテヌート
最初は少しゆっくり弾きはじめ,加速し,最後はやや減速させます。
カデンツァの途中でアクセントをつけない
指をくぐらせるときにアクセントがついてしまわないように気をつけましょう。
3度の下降スケールでは拍の頭にアクセントをつけてしまいがちなので,これも気をつけましょう。
最後のDの3回連打は鍵盤を叩きすぎて下品にならないように
ショパンコンクール入賞者たちの映像を見て真似をしているのか,
空いてる手で,D音の両取りの白鍵が鳴らないように抑えておいて,
空手の貫手のように右手の指先で思い切り叩きつけたり,
左手のゲンコツで思い切り殴りつけるような演奏が増えました。
当サイト管理人は,ゲンコツで殴りつけるような演奏は嫌いです。
何より,そんな弾き方をしてしまっては,ピアノは決して美しい音が鳴りません。
若き日のポリーニの演奏動画を見つけたので貼り付けておきます。
演奏そのものもすばらしいですが,何よりも演奏している姿が上品でかっこいいですね。
体幹が左右にぶれず,背筋はピンと伸び,両腕は完全に脱力されています。
鍵盤を上から叩きつけるようなことはなく,フォルテを打鍵するときも,ちゃんと指を鍵盤につけてから打鍵しています。
最後のD音を3回連打する姿にも,鬼気迫る迫力の中にも上品さがあります。
Q.左手が疲れます
A.脱力です!
12~13度の広い音域の分散和音を延々と引き続けるのは,大変です。
脱力ができていないと,スグに疲れてしまいます。
手・腕の筋肉に力を込めずに,力を抜いて反復練習することで,脱力は身につきます。
力を抜いて演奏可能な速さで,メトロノームにあわせてゆっくりと繰り返し練習しましょう。
そして,メロノームをすこしずつ速くしていきます。
脱力は一朝一夕で身につくものではありません。
日頃から脱力を意識して練習を重ねてください。
Q.スケールのカデンツァが難しいです。
A.ハノンです!
スケールとアルペッジョはピアノ演奏の基本です。
ハノン39番と41番は,メトロノームの指示どおりの速さできれいに弾けるようになるまで,日々練習を重ねてください。
Q.3度の下降スケールが弾けません(T_T)
A.自分にとってのベストな指遣いを探しましょう!
指遣いが重要です。
3度の演奏には,万人に共通のベストな指遣いというのはありません。
ピアノ上級者たちは,それぞれ自分にとってのベストな指遣いを身体が覚えています。
まずは,自分にとって一番弾きやすい指遣いを試行錯誤で探しましょう。
そして,無意識に指が動くようになるまで,ひたすら反復練習して身体に叩き込みます。
3度の演奏は,ピアノ演奏技術の中でも,最も習得の難しいものかもしれません。
当サイト管理人は,ショパンのエチュードOp.25-6を弾けるようになりたくて,
ひたすら3度の練習ばかり繰り返していた時期がありました。
目の前にピアノがなくても,学校でも,バスに乗っていても,歩いていても,常に頭の中は3度の指遣いについてあれこれ考え,机の上や体の上で指を動かしながら試行錯誤を繰り返しました。
そのせいで,それから数十年たった今でも,机の上など,手が何かに触れていると,無意識に指が3度の演奏をしはじめるというクセがついてしまいました。
3度の演奏の習得には近道はありません。
やってやろう,と思い立つ機会があれば,3度の指遣いについてトコトン試行錯誤してみてください。
ショパン 前奏曲 Op.28-24 実際の演奏
当サイト管理人の演奏です。
※当サイト管理人,”林 秀樹”の演奏です。2020年11月25日録音。
◆Op.28-24のみ再生
◆24曲全曲再生リスト
本来,前奏曲集は24曲全曲を通して演奏するべきなのですが,今回は各曲の解説が目的なので,1曲ごとに区切って演奏を公開していきます。
ショパンの意図を忠実に再現しようとしています。
(なかなか難しいですが・・・)
ぜひ,お聴きください!
ショパン前奏曲集の解説が完結しました!
当初考えていたよりは随分と時間がかかってしまいましたが,
ショパン前奏曲集,全24曲の解説を無事に完結することができました!
愛するショパンの作品の中でも,群を抜いて好きな作品です。
各曲への愛が深すぎて,記事の中身が膨れ上がり,こんなにも時間がかかってしまいました。
ショパン前奏曲集への思いの強さは,ショパン 前奏曲集Op.28【各曲解説への目次と作品全体の解説】の「ショパン 前奏曲 概要」の項目に書きましたから,ここでは触れません。
大好きなショパンの作品ですが,世にあふれているショパンの録音は,どれもショパンの意図が完全に反映された演奏とはいえないものばかりです。
当サイト管理人もピアノが弾けないわけではありませんが,
一流のピアニストほどの技術はありません。
ショパンの意図が完全に反映された,一流のピアニストたちの演奏をたくさん聴けるようになることが,当サイト管理人の夢です。
才能あるピアノ学習者たち,未来の一流ピアニストたちに,当サイトの情報を参考にしていただき,
変なクセがついてしまう前に,正しいショパンの演奏を身につけて,
やがて,すばらしいショパンの演奏を聴かせてほしいと願っています。
いつの日か,大好きな前奏曲集の,隅々までショパンの意図が反映された演奏との出会いがあることを夢見て,前奏曲集の解説を終わりたいと思います。
今回は以上です!