※他の曲の解説へのリンクや,作品全体の解説はこちらへ。
※当サイト管理人,”林 秀樹”の演奏です。2020年11月25日録音。
◆Op.28-21のみ再生
◆24曲全曲再生リスト
ショパン 前奏曲 Op.28-21 概要
珍しい音型の左手伴奏
左手伴奏の音型が,一つの音から始まって上下に分かれていく珍しい音型でできています。
印象に残る伴奏音型です。
音型にあわせて,左手伴奏は1小節ごとにクレッシェンドやディミヌエンドを繰り返し,
そのたびに,感情が大きく揺さぶられます。
再現部では,この伴奏音型が右手にもあらわれ,拡大されます。
そして作品のクライマックスに至ります。
晴れやかな旋律は牧歌的で,幸福感があふれています。
穏やかな美しい作品ですが,第20番の崇高な嘆きと,第22番の悲劇的な叫びに挟まれていて,
美しいからこその儚さを感じます。
頭の中に鳴り響く音
中間部の左手は,鐘がぐわらん,ぐわらんと鳴り響くようで,論理的思考がすべて真っ白にかき消されるようです。
ショパン 前奏曲 Op.28-21 構成
変ロ長調 カンタービレ,4分の3拍子。
変ロ長調
ショパンは変ロ長調の作品を12曲のこしていますが,小品が多く,主要作品が少ないです。
ショパンの変ロ長調の作品の中では,前奏曲Op.28-21が最も有名な作品でしょう。
シューマンが「諸君帽子をとりたまえ,天才だ!」の紹介記事を書いた,「ラ・チ・ダレム・ラ・マノによる変奏曲Op.2」も変ロ長調で書かれています。
カンタービレ
冒頭に,Cantabile;カンタービレ,歌うように、表情豊かに,の指示が書かれています。
前奏曲集の中で,カンタービレの指示があるのは,唯一Op.28-21だけです。
ショパンはどんな作品でも,歌うように,表情豊かに演奏することを求めていました。
ショパンの作品では,カンタービレと書いてなくとも,カンタービレで演奏するのが当然です。
そんなショパンが,あえて「Cantabile」と書いているのです。
演奏者は,もてる技術の全てを使って,最大限「歌うように,表情豊かに」演奏しなければなりません。
分かりやすい三部形式
A(起承転結)─B(起承転結)─A’─コーダの分かりやすい三部形式です。
A,B部分は4小節ずつのかたまりででてきて,それぞれ「起承転結」の分かりやすい構成になっています。
珍しい伴奏音型が印象的で,
- A部
- 珍しい伴奏音型が印象的
- 音型にあわせて,クレッシェンド,ディミヌエンドが繰り返され,感情が揺れ動かされる
- B部
- ペダルをベタ踏みした中,伴奏音型が鳴り響く。
- 鐘の音がぐわらん,ぐわらん,と脳内で鳴り響き,論理的思考が真っ白に消されるよう。
- A’部
- A部の伴奏音型が両手ユニゾンに拡大される。
- A部とは違って,6小節にわたって息の長いクレッシェンドが続く。
旋律はため息のモチーフを繰り返しながら,旋律も伴奏音型も上昇を続ける。
- A’部中盤でff;フォルテシモとなり,その後ディミヌエンドとともに音域を下降していく。
- コーダ
- 伴奏音型は単旋律の簡素なものとなり,最後は低音部の旋律を奏でる。
- 最後は静かに終わるのではなく,クレッシェンドしてf;フォルテで終わる。
ショパン 前奏曲 Op.28-21 版による違い
2小節目,長前打音
2小節目に長前打音が書かれています。
しかし後世に出版された多くの楽譜で短前打音に変更されてしまっています。
コルトー版のような権威ある出版譜でも短前打音になっています。
コルトー版はたしかに解釈版(校訂者のコルトーが,「このように演奏するべき」だという演奏方法を楽譜にしたもの)ですが,
ここまで変えてしまっては,演奏解釈というよりも,編曲になってしまいます。
ショパンの作品にとって,装飾音は重要なものであり,長前打音と短前打音では,演奏法がまるで異なります。
長前打音と短前打音は全く別の装飾音です。
4小節目,休符がないことからの混乱
自筆譜を見ると,付点二分音符の付点が消されて二分音符に変更されたようです。
伴奏の一番最後の音のE♭音を右手で弾くことにしたので,付点を消したものと思われます。
最後のE♭音を右手で弾くことは,ジェーン・スターリングやショパンの姉ルドヴィカが使用していたフランス初版への,ショパンによる運指の書き込みによっても明らかです。
たとえ,このE♭音を右手で弾くことになったとしても,右手旋律のG音と,左手伴奏であるE♭音は声部が違うため,エキエル版のように,休符が記譜されるべきです。
ところが,ショパンは休符を記譜しませんでした。
このことから,出版譜に様々な混乱が生じています。
G音が二分音符なら,右手で弾くE♭音は四分音符だろうということなのか,ドイツ初版では四分音符になってしまっています。
これでは,この右手のE♭音が伴奏の一部ではなく,旋律の一部になってしまい,旋律が変わってしまいます。
ドイツ初版ではスラーもE♭音まで伸びており,このE♭音が完全に旋律の一部になってしまっています。
また,ドイツ初版だけペダル指示も異質です。
現在出版されている楽譜の中には,ドイツ初版のように,E♭音が四分音符になってしまっている楽譜もたくさんあります。
購入時は気をつけたほうが良いでしょう。
4分の3拍子なのだから,G音は付点二分音符でなければおかしい,ということで,
ミクリ版やコルトー版をはじめ,現在出版されている多くの出版譜では,G音に付点がついて,付点二分音符になってしまっています。
自筆譜や初版譜,複数の出版譜を比較検討するような研究熱心な演奏者でない限り,ショパンの楽譜はやはりエキエル版を購入するしか選択肢がないですね。
6小節目,♮が抜けている
6小節目の左手伴奏の4番目の音のG音ですが,自筆譜や各初版には♮がありません。
これは♮をつけるのが正解です。
現在出版されている楽譜では,ほとんどの楽譜できちんと♮がつけられて出版されています。
23小節目,31小節目のA音に♭がない
自筆譜とフランス初版,ドイツ初版では,23小節目と31小節目のA音に♭がありません。
これは♭をつけるのが正解です。
なお,ドイツ初版の23小節目では,A音そのものが消えてしまっています。
現在出版されている楽譜では,ほとんどの楽譜できちんと♭がつけられて出版されています。
50小節目,ドイツ初版のみA音がオクターブ
50小節目の左手A音。ドイツ初版のみオクターブになっています。
これは明らかにドイツ初版の間違いです。
50~52小節目,付点が勝手につけられている
50~52小節目の右手旋律ですが,自筆譜も各初版もすべて違いはなく,
- 50小節目と52小節目のオクターブのG音は二分音符(付点なし)
- 51小節目のF-B♭-F音は二分音符で,D音だけが付点二分音符
になっています。
ところが,ドイツ版の第二版で,これらの二分音符に付点をつけてしまったため,
ミクリ版やコルトー版など,後世の権威ある出版譜も付点をつけてしまっています。
現在書店で売られている楽譜の多くにも,付点がつけられてしまっているので,要注意です。
54小節目,1小節まるごと消えてしまった!
ドイツ初版では,なんと54小節目がまるごと消えてしまっています。
ドイツ初版では,第12番の78~79小節目の2小節もまるごと消えてしまっていましたが,
このときと同じ理由で,フォンタナが写譜をする際に写し間違えたのが原因です。
明らかな間違いなのですが,現在でも多くの楽譜が,54小節目が消えてしまったまま出版されています。
書店で楽譜を購入する際は要注意です。
なんと,ミクリ版のように権威ある出版譜でも54小節目が消えたままです。
ドイツ初版は,55小節の左手の4番目の音も間違えています。
ショパン 前奏曲 Op.28-21 自筆譜を詳しく見てみよう!
全景
そんなに規模の大きな作品ではないのですが,音符の間隔を広くあけて記譜されているため,
2ページではおさまらず,3ページにわたって記譜されています。
2ページ目の一番下の段は,あと1段では作品の最後まで書ききれないのと,
1ページ目のインクが滲み出てきていることが原因だと思われますが,
使われずに空白になっています。
3ページ目は,第22番のインクが滲み出てきているため,
そのインクのしみを避けるように,記譜されています。
このことから,第21番は,第22番よりも後に記譜されたことが確認できます。
ショパン 前奏曲集Op.28【各曲解説への目次と作品全体の解説】の「ショパン 前奏曲集 基本情報」に作曲年代をまとめていますが,
第21番は,第1,2,4,10番とともに,前奏曲集でも最後の方に完成された作品です。
なお,第1番ハ長調が一番最後に完成されたと考えられています。
冒頭
Cantabile
速度指示と思われるものが消されて,Cantabileに書き直されています。
速度指示は丁寧に塗りつぶされていますが「A」から始まる速度指示であったことが確認できます。
Allegrettoだったのか,Anadanteだったのか・・・ 気になりますね。
拍子
拍子も,もともとは8分の6拍子だったのが,4分の3拍子に書き直されています。
p;ピアノの指示が書かれていた?
最初に小節線を書いてしまったようで,その小節線を消しているのですが,
よく見ると「p」らしい書き込みも消されています。
最終的には,冒頭には強弱記号が書かれていないのですが,
もともとは「p;ピアノ」の指示を書いていたのかもしれません。
丁寧なペダル指示
特徴的な伴奏音型は,その音楽的効果を発揮するためにはペダルの使い方が肝となります。
いつもペダル指示を丁寧に書いているショパンですが,
この作品でもペダル指示を丁寧に書き込んでいます。
2小節目,長前打音
前述しましたが,2小節目の装飾音は,短前打音ではなく,長前打音が書かれています。
6小節目,トリルではない!
6小節目にトリルのようなものが出てきますが,これはトリルではありません。
旋律のD音が主音ですから,トリルなら「DE♭D,レミ♭レ」または「DCD,レドレ」となるからです。
これは,12小節目に出てくるターンと同様に,1拍目の音(E♭音)を主音とする任意の装飾音になります。
トリルだとして演奏すると,
トリルの正しい演奏が身についている演奏者ならば,
装飾音のはじめのE♭音を2拍目の頭に演奏することになります。
しかし実際はトリルではありませんので,装飾音のミ♭ファミ♭は1拍目と2拍目のあいだで弾いて,
旋律のD音を2拍目の頭にあわせることになります。
つまりは,12小節目のターンと同じ演奏法になります。
トリルであっても,間違えて拍より早く先取りで演奏している演奏者がほとんどなので,
普段からトリルを間違えて演奏している演奏者ならば,
この装飾音をトリルだと思って演奏することで,
この装飾音は正しく演奏されることになります。
ショパンは12小節目の最後のセンツァ(ペダルを離す記号)を消して,
13小節目の2拍目にセンツァを書いています。
このように,ショパンはペダルの指示もこだわりを持って,丁寧に記譜しているのですが,
残念ながら,出版されている楽譜のほとんどは,勝手な解釈で,好きなようにペダル指示をつけています。
エキエル版は,ペダル指示も,ショパンの意図が忠実に再現されています。
1~16小節目,丁寧に書き込まれたクレッシェンドとディミヌエンド
1~16小節目,左手の伴奏音型が特徴的な主部ですが,
ショパンはクレッシェンドやディミヌエンドを丁寧に記譜しています。
ショパンは記譜による演奏者への心理的影響も考えて記譜をしています。
クレッシェンドやディミヌエンドを,伴奏音型の下に書いたり,大譜表の真ん中に書いたり,
これはショパンの気まぐれではなく,演奏者へのメッセージが込められています。
エキエル版を見ると,クレッシェンドやディミヌエンドの印刷されている場所,その長さ,など,
ショパンの意図が忠実に再現されています。
エキエル版はやはりすばらしいです。
17~32小節目,こだわりのペダル指示
17~32小節目,中間部ですが,
ペダル指示にショパンのこだわりを感じます。
- 17小節目に踏まれたペダルは,18小節目の終わりにいったんペダルを離したあと,
19小節目にペダルを踏んだあと,24小節目の終わりまで,ペダルをベタ踏みとなります。- 22小節目から23小節目にかけて,ペダルを踏み変える指示が書き込まれていましたが,後から消されています。
- 18小節目でも,ほんとはペダルを踏み変えずに,17小節目から24小節目までペダルを踏んだままにしたかったのではないかと,当サイト管理人は想像しています。
- 25小節目から32小節目までペダルの指示がありません。
- ショパンはペダルの指示を丁寧に書き込みますので,これは暗に「ペダルを使用しないように」という指示になります。
33小節目~,スラーが伸ばされている
再現部,33小節目以降です。
小節の終わりまでだったスラーが,小節線をまたいで,次の小節の頭まで,スラーが伸ばされています。
ショパンはスラーやスタッカートなどのアーティキュレーションも,こだわって丁寧に記譜しています。
33小節目から息の長いcresc.- – – が書かれていて,39小節目にはffとなり,その後,41小節目からは,dim.- – – が書かれています。
41小節目から44小節目まではペダル指示が書かれていません。
暗に「ペダルを使用しないように」という指示になります。
コーダは訂正の跡が多数
45小節目以降,たくさんの訂正の跡がのこっています。
それだけ,ショパンがこだわって推敲を重ねた箇所だといえるでしょう。
45,46小節目
45小節目では,左手伴奏音型にかかれていたディミヌエンドが消されています。
46小節目は,1小節がまるごと全部書き直されています。
50,51小節目
50~51小節目は,2小節にわたって塗りつぶされて,新たに書き直されています。
50小節目の1拍目,51小節目の3拍目に,かなり濃く塗りつぶされて跡が残っています。
もともと何が書き込まれていたのか,まったく読み取れません。
52小節目には,50小節目と同様の訂正跡がのこっています。
最終部分
大きな修正跡が多数残っています。
最後の3小節間は,内声部の「D→C→B♭」が旋律であることがはっきりとわかるように記譜されています。
最後は,ショパンの作品にはよくあることですが,
ペダルを踏んだままFineとなり,センツァ(ペダルを離す記号)は書かれていません。
ショパン 前奏曲 Op.28-21 演奏上の注意点
前奏曲集中唯一のCantabile
冒頭に,Cantabile;カンタービレ,歌うように、表情豊かに,の指示が書かれています。
前奏曲集の中で,カンタービレの指示があるのは,唯一Op.28-21だけです。
ショパンはどんな作品でも,歌うように,表情豊かに演奏することを求めていました。
ショパンの作品では,カンタービレと書いてなくとも,カンタービレで演奏するのが当然です。
そんなショパンが,あえて「Cantabile」と書いているのです。
演奏者は,もてる技術の全てを使って,最大限「歌うように,表情豊かに」演奏しなければなりません。
歌うように,表情豊かに演奏するためのポイントは,
- アーティキュレーション;強弱記号やスラー,アクセント,クレッシェンドやディミヌエンド
- 装飾音
この2点です。
アーティキュレーション
ショパンはアーティキュレーションも丁寧に記譜しています。
しかし,出版されている楽譜のほとんどは,ショパンの意図が反映されておらず,勝手に書きかえられてしまっています。
特にスラーはメチャクチャに書きかえられてしまっていることが多く,
スラーの繋がりが変わってしまうということは,メロディラインの息継ぎの箇所が変わってしまうことになります。
ショパンの意図が完全に反映された楽譜は,エキエル版しかない,といってもよいでしょう。
やはりショパンの楽譜は,エキエル版を購入することをオススメします。
装飾音
「歌うように」演奏するために最も重要なのは装飾音です。
ショパンの装飾音については,8つの記事で詳細を解説していますので,ぜひご覧ください。
2小節目,長前打音
2小節目の長前打音の奏法ですが,
・前打音のF音を拍と同時に演奏する。
・前打音のF音を十分に長く伸ばす。
のが正しい奏法です。
間違えて短前打音になってしまっている楽譜がたくさん出版されているので気をつけましょう。
ショパンの前打音は拍と同時に演奏するのが正解です。
しかし,多くの演奏者,というよりもほとんどの演奏者が先取りで演奏しています。
プロの演奏家,巨匠と呼ばれる名演奏家たちも,ほとんどが先取りで演奏してしまっています。
ショパンの作品は著作権も切れており,演奏者が好きなように演奏すれば良いのですが,
ショパンの意図を忠実に再現した演奏をするのならば,拍と同時に演奏しなければなりません。
短前打音ではなく長前打音ですので,
前打音に十分な音価を持たせなければなりません。
バロック時代の奏法ほど,長く伸ばしてしまうと,やや伸ばしすぎになります。
上の譜例のように演奏するのがベストです。
6,12小節目の装飾音
前述しましたが,6小節目の装飾音はトリルではありません。
ショパンのトリルの正しい奏法が身についた演奏者,
つまりは,トリルを拍と同時に演奏する演奏者は,要注意です。
この装飾音はトリルではありませんから,拍と同時に演奏しません。
そもそも,この装飾音は1拍目のE♭音を主音とする装飾音です。
旋律のD音を2拍目の頭に鳴らしてください。
実際は,ショパンのトリルを間違えて先取りで演奏している演奏者がほとんどですので,
この装飾音をトリルだと勘違いしていても,偶然正しく演奏されることになります。
この6小節目の装飾音に関しては,ほとんどの演奏者が正しく演奏しています。
6小節目の装飾音と12小節目の装飾音とは同じ種類のものです。
1拍目と2拍目のあいだで演奏し,慌てずにゆっくりと演奏します。
23,31小節目の前打音
中間部に前打音が2回出てきます。
前打音は拍と同時に演奏するのが正解です。
ショパンのペダル指示を蔑ろにしない
ショパンはペダル指示も丁寧に記譜しており,
ショパンのペダル指示を蔑ろにしてはいけません。
主部のペダルは徐々に浅くしていく
主部でのショパンのペダル指示は,小節の頭でペダルを踏んだあと,2拍目にセンツァ(ペダルを離す記号)が書かれています。
ペダルを踏んで,離して,と機械的にやってしまうと,響きが2拍目でプツンと切れてしまいます。
2拍目でハーフペダルになるぐらいの加減で,小節の頭からペダルの踏み込みを徐々に浅くしていき,小節の最後にペダルが完全に離れて,次の小節の頭でペダルが踏み変えられるよういしましょう。
中間部以降,ショパンのペダル指示に忠実に
中間部以降,
- 25~32小節目
- 41~44小節目
- 49~56小節目
には,ペダル指示がまったく書き込まれていません。
*フランス初版では57小節目にもペダル指示がありませんが,
ショパンの自筆譜では,57小節目にはペダル指示が記譜されています。
ペダル指示がまったくないからといって,完全にペダルを離してしまうと,音が貧相になりますので,豊かに音が響くように,浅くペダルを使用します。
しかし,ショパンがペダル指示を記譜している場所と,していない場所とでは,
明らかな響きの違いがなければなりません。
ショパンがペダル指示を記譜していない場所では,ペダルを踏みすぎないように気をつけましょう。
25~32小節目は,ペダルなし&pp
25小節目には,pp;ピアニシモが記譜されています。
ppは,24曲の前奏曲集に7回しか記譜されていない,特別な指示です。
24小節目までベタ踏みされていたペダルを,25小節目からは離してしまう(実際は豊かな響きにするために軽く踏む)ことで,効果的にppを表現することができるでしょう。
18小節目のペダルの踏み変えはハーフペダルで
17小節目から24小節目まで,ペダルをベタ踏みにするのですが,
いったん18小節目でペダルを踏み変える指示になっています。
しかし,18小節目で完全にペダルを踏みかえてしまうと,
ペダルをベタ踏みしている効果が薄れます。
17小節目の低音G♭音の響きが,24小節目まで消えないように,
18小節目のペダルの踏みかえは,ハーフペダルで踏みかえましょう。
最後はペダルを踏んだまま
ショパンの作品にはよくあることですが,
最後はペダルを踏んだまま終わります。
現代のピアノでは,かなりの長い時間音が消えずに響き続けますので,
徐々にペダルを浅くしていき,徐々に音が消えるようにしましょう。
冒頭に強弱記号がない
冒頭に強弱記号は記譜されていません。
しかし,p;ピアノを書いてから消したような跡がのこっています。
ミクリ版,コルトー版では冒頭にpが書かれていますので,参考にしましょう。
内声部の「D→C→B♭」
最後の3小節,内声部の「D→C→B♭」がとりわけ目立つように記譜されています。
この内声部の「レ→ド→シ♭」が旋律であることが明記されています。
この3音が旋律としてはっきり浮かび上がるように演奏しましょう。
ショパン 前奏曲 Op.28-21 実際の演奏
当サイト管理人の演奏です。
※当サイト管理人,”林 秀樹”の演奏です。2020年11月25日録音。
◆Op.28-21のみ再生
◆24曲全曲再生リスト
本来,前奏曲集は24曲全曲を通して演奏するべきなのですが,今回は各曲の解説が目的なので,1曲ごとに区切って演奏を公開していきます。
ショパンの意図を忠実に再現しようとしています。
(なかなか難しいですが・・・)
ぜひ,お聴きください!
今回は以上です!