演奏は当サイト管理人,林 秀樹です。
アマチュアのピアニストの演奏ですので,至らぬ点もたくさんあると思いますがご容赦ください!
- ショパン前奏曲集 Op.28【24曲全曲再生リスト】
- ショパン前奏曲 Op.28【各曲再生】
- 第1番 ハ長調 アジタート,8分の2拍子。
- 第2番 イ短調 レント,2分の2拍子。
- 第3番 ト長調 ヴィヴァーチェ,2分の2拍子。
- 第4番 ホ短調 ラルゴ,2分の2拍子。
- 第5番 ニ長調 アレグロ・モルト,8分の3拍子。
- 第6番 ロ短調 レント・アッサイ,4分の3拍子。
- 第7番 イ長調 アンダンティーノ,4分の3拍子。
- 第8番 嬰ヘ短調 モルト・アジタート,4分の4拍子。
- 第9番 ホ長調 ラルゴ,4分の3拍子。
- 第10番 嬰ハ短調 アレグロ・モルト,4分の3拍子。
- 第11番 ロ長調 ヴィヴァーチェ,8分の6拍子。
- 第12番 嬰ト短調 プレスト,4分の3拍子。
- 第13番 嬰ヘ長調 レント,4分の3拍子。
- 第14番 変ホ短調 アレグロ,2分の2拍子。
- 第15番 変ニ長調「雨だれのプレリュード」 ソステヌート,4分の4拍子。
- 第16番 変ロ短調 プレスト・コン・フォコ,2分の2拍子。
- 第17番 変イ長調 アレグレット,8分の6拍子。
- 第18番 ヘ短調 アレグロ・モルト,2分の2拍子。
- 第19番 変ホ長調 ヴィヴァーチェ,4分の3拍子。
- 第20番 ハ短調 ラルゴ,4分の4拍子。
- 第21番 変ロ長調 カンタービレ,4分の3拍子。
- 第22番 ト短調 モルト・アジタート,8分の6拍子。
- 第23番 ヘ長調 モデラート,4分の4拍子。
- 第24番 ニ短調 アレグロ・アパッショナート,8分の6拍子。
ショパン前奏曲集 Op.28【24曲全曲再生リスト】
作品の解説や演奏のポイントなどは別記事にまとめていますので,関連記事をご覧ください。
この記事では,演奏を録音したときの苦労話を,日記感覚でだらだらと書き綴っておきます。
24の前奏曲集Op.28は,各曲を単独で演奏するならば,ショパンの作品の中では技術的に難しい作品ではありません。
難しいどころか,ピアノ初心者でも演奏可能な名曲がたくさんあります。
第15番『雨だれのプレリュード』をはじめ,第4番ホ短調や第6番ロ短調のように叙情的な名曲や,第7番イ長調(太田胃散のCM曲ですね)のように愛らしい小品,深い祈りに満ちた第20番ハ短調など,ショパンの入門曲としてピッタリの作品がたくさんあります。
しかし,24曲を連続で一つの作品として演奏することが意図されているのは明らかで,ショパンの作品の中ではもっとも規模の大きな作品だと言えます。
その演奏時間は40~50分にもおよびます。
ソナタや協奏曲のような3~4楽章の構成ではなく,性格のまるで違う様々な曲想の24曲で構成されています。
この巨大な作品を,一つの楽曲としてまとめあげるのはかなり難しいです。
第16番変ロ短調や第19番変ホ長調,第24番ニ短調のように,単独でも演奏技術を要する作品がいくつかあります。
しかし,練習曲集のようにメトロノームによる速度指示が書かれていない分,無理して速く弾く必要がないので気が楽でした。
本来はメトロノームの指示が書かれていたとしても,生真面目に従う必要はありません。
メトロノームの指示によって,ショパンがどういった表現を求めているのか,ショパンの意図を汲み取って演奏表現することが重要です。
テンポだけでなく,アーティキュレーションや強弱,ペダリング,タッチの軽さ・重さ,リズムの鋭さ,休符の長さ等々によって,音楽から感じられる速さの印象は大きく変化します。
音楽の速さはテンポだけで決まるものではないのです。
しかし,ショパンの意図を忠実に再現するための参考演奏資料ですから,ショパンがメトロノームによる指示を書き込んでいるなら,メトロノーム通りのテンポによる演奏を実現する努力が必要になります。
前奏曲集はメトロノームの指示が書き込まれていないため,普段どおり自然なテンポで演奏ができたので,どの曲も撮りなおすことなく録音を終えることができました。
ショパン前奏曲 Op.28【各曲再生】
第1番 ハ長調 アジタート,8分の2拍子。
24曲からなる巨大な作品の幕開けです。
乗り気でないときには,とても最後まで演奏はできない作品です。
職業ピアニストの方は,演奏プログラムを事前に決めますから,
演奏会当日に気分が乗らなかったらどうするんだろう?などと要らぬ心配をしてしまいます。
気楽なアマチュアピアニストは,弾きたいときに,弾きたい曲を演奏できます。
当サイト管理人にとっては,愛するショパンの作品の中でも,最も敬愛する作品です。
第1番ハ長調を弾き始めると,気分がワクワクと浮き立ちます。
5連符になるところが美しいです。
第2番 イ短調 レント,2分の2拍子。
ショパンを愛する,当サイト管理人ですが,この曲だけは弾いていて楽しく感じたことがありません。
前奏曲集の各曲は,ちょっとしたときに気分にあわせて単独でも楽しめます。
しかし,第2番を単独で演奏しようと思うことはありません。
なんでこんな曲を書いちゃったのかなぁ,謎だなぁ,早く次の曲にいきたいなぁ,という気持ちを抑えて,なんとか目の前の第2番に集中しなければならないのが大変です。
ペダルを多用せずに左手伴奏をレガートに演奏するところが表現できていると思います。
長前打音の正しい奏法も表現できています。
第3番 ト長調 ヴィヴァーチェ,2分の2拍子。
退屈な(当サイト管理人の個人的な意見です)第2番をようやく弾き終え,
第3番にたどりついたときの喜びは格別です。
爽快な気分で楽しく演奏できる作品ですが,
左手伴奏は音を外しやすいので,気を抜くことはできません。
leggieroを十分に表現できたと思います。
速いテンポで弾いていますが,右手のアルペッジョを拍と同時に弾くことで,
テンポがぶれずに,旋律にきれいにルバートがかかっています。
第4番 ホ短調 ラルゴ,2分の2拍子。
ショパンが冒頭に『espressivo;表情豊かに』と書き込んだ作品。
ショパンの葬儀でも演奏された名曲に心を奪われますが,
冷静さをなくすと演奏が崩れます。
客観的に自分の演奏を聴くことも重要です。
ペダルを多用せず,テンポをクネクネ・ネチネチと変化させることなく,
それでいて表情豊かに,音色の変化がわかる演奏に仕上がりました。
長前打音の正しい奏法にも注目です。
第5番 ニ長調 アレグロ・モルト,8分の3拍子。
抒情的な第4番と第6番のあいだに挟まれた短い作品。
曲集全体の中では,口直しとしての役割を担っていますが,
技術的には難しいので集中力を切らせることはできません。
ショパンの丁寧なペダル指示や,16分音符の中に時々あらわれる4分音符や8分音符を忠実に再現しています。
第6番 ロ短調 レント・アッサイ,4分の3拍子。
第4番に続き,第6番も抒情的な作品です。
寂寥感が漂っていて,感動的です。
自分の演奏に感動しながらも,冷静で客観的に演奏を聴くことも大事なのは,
第4番と同じです。
ショパンの指示に従ってペダルを極力つかわずに,低音部の旋律を歌い上げることができています。
右手伴奏のターン・タン,ターン・タン,という風情ある音型も表現しました。
第7番 イ長調 アンダンティーノ,4分の3拍子。
愛らしい作品です。
普段はもう少しテンポを速く,マズルカ風に演奏していますが,
今回は曲集全体の流れを強調する目的で,
ゆっくり弾いています。
属七の和音がアルペッジョなど使わずに,きれいに響いています。
最後の長前打音の正しい奏法に注目ください。
第8番 嬰ヘ短調 モルト・アジタート,4分の4拍子。
譜読みは何回もしたことがありますし,暗譜もしているのですが,
なにせ音の数が多いので,自分が暗譜している音があっているのか,いつも不安になります。
特に今回は,資料として演奏を録音するのが目的だったので,
余計に慎重になりました。
暗譜している音を確かめるように,一つ一つの音をよく聴いて弾いたため,
普段よりはゆっくり弾いています。
第9番 ホ長調 ラルゴ,4分の3拍子。
三連符と付点リズムを揃えて演奏している,「正しい」演奏はめずらしいので,
それだけでも貴重な参考演奏資料となったのではないでしょうか。
リズムを正しくするあまり,じゃっかん杓子定規な演奏になってしまいましたが,
参考演奏資料としては,これで良かったかと思います。
実際はもう少しリズムやテンポを変化させて,遊び心をいれたほうが良いと思います。
低音の「下からのトリル」を正しく拍と同時に弾くことで,不協和音が心地よく響いています。
第10番 嬰ハ短調 アレグロ・モルト,4分の3拍子。
曲が変わるたびに,テンポの緩急が大きく変わります。
第9番はLargoで,さらに最後にritenutoして終わります。
そこから,第10番はAllegro molto に変わりますから,意識しないと,最初の6連符をゆっくり弾きすぎてしまいます。
低音部のアルペッジョを拍よりも先取りで弾き始めることで,マズルカ風のリズムが自然に感じ取れます。
低音部の「下からのトリル」を拍と同時に弾くことで,不協和音が強烈に響いています。
次の第11番のlegatoと,この第10番のleggieroとの対比を明確にするため,打鍵のタッチに気をつけました。
第11番 ロ長調 ヴィヴァーチェ,8分の6拍子。
短前打音やトリルを拍と同時に弾くことで,テンポがゆれることなく,きちんと8分の6拍子(8分音符3個でひとかたまり)になっています。
前半に出てくる短前打音と,最後に出てくる長前打音との違いもはっきりわかります。
第12番 嬰ト短調 プレスト,4分の3拍子。
手が大きな演奏者には弾きやすい作品です。
でも,エチュードのようにメトロノームで速度指定されていたら,もっととんでもない速さで弾くことになっていたかもしれません。
この作品であまり大音量を出してしまうと,第18番や第24番に出てくるfffが表現できないので,注意が必要です。
第13番 嬰ヘ長調 レント,4分の3拍子。
ペダルを多用せずに,左手の伴奏音型のlegatoを実現しました。
長前打音を正しく演奏することで,旋律が豊かに歌うように奏でられています。
再現部は広い音域の和音が多く,旋律が内声部にあったりして,演奏が難しいですが,楽譜に忠実に演奏すると,ピアノがこの世のものとは思えぬほど美しく響きます。
第14番 変ホ短調 アレグロ,2分の2拍子。
第2番と同様の謎音楽です。
第2番とちがって,短時間で過ぎ去っていくので,第2番と比べると,演奏していて苦痛は軽いです。
もっと速いテンポのほうが良いかもしれませんが,pesanteの表現を優先しました。
第15番 変ニ長調「雨だれのプレリュード」 ソステヌート,4分の4拍子。
雨だれのプレリュード。名曲です。
ショパンの変ニ長調は美しいです。
伴奏となるA♭音=G♯音を一定のテンポで弾きながら,
右手の装飾音をゆったりと演奏することで,旋律には自然なルバートがかかります。
ショパン好きにとって,雨だれを演奏している時間は至福のときです。
第16番 変ロ短調 プレスト・コン・フォコ,2分の2拍子。
ショパンの指示通り,ペダルベタ踏みにより,凄まじい音響効果が生み出されています。
コーダ,両手ユニゾンのところの”ペダルなし→ペダルベタ踏み”というペダルによる音響の変化に注目です。
strettoやanimatoもしっかり表現しました。
この曲も,エチュードのようにメトロノームの速度指示がされていたら,録音が大変だっただろうと思います。
第17番 変イ長調 アレグレット,8分の6拍子。
分厚い和音が続きますが,音圧を抑えてショパンらしくNobleな響きにしました。
トリルを拍と同時に弾くことで,テンポがぶれることなく,旋律が美しく歌われています。
最後,低音のA♭音がなんども鳴らされるところは,美の極致です。
第18番 ヘ短調 アレグロ・モルト,2分の2拍子。
音楽というよりは,魔の王の言葉鳴り響くような恐ろしい音響世界。
曲集ではじめてfffが登場し,音量もいったんピークを迎えます。
第19番 変ホ長調 ヴィヴァーチェ,4分の3拍子。
個人的に,前奏曲集の中で最も弾きづらい曲です。
今回は参考演奏資料のための録音ということで,音を外さないようにかなりの集中力を要しました。
この曲も,もしもメトロノームによる速度指示があったら,もっと録音が難しかったことでしょう。
第20番 ハ短調 ラルゴ,4分の4拍子。
ショパンの指示通りペダルを多用しないことで,一つ一つの和音がくっきり響きます。
ひとつのフレーズが長く,ペダルなしで息長くフレーズをつなげるのが難しいです。
第21番 変ロ長調 カンタービレ,4分の3拍子。
長前打音やターンなど装飾音を正しく演奏することで,旋律が自然と歌い出します。
ショパンのペダル指示を忠実に再現しており,ペダルがあたえる音響効果のすばらしさがわかります。
第22番 ト短調 モルト・アジタート,8分の6拍子。
左手旋律につけられているスラー,アーティキュレーションを忠実に再現しています。
ショパンのペダル指示も再現しました。
最後のpiu animatoも表現されています。
第23番 ヘ長調 モデラート,4分の4拍子。
個人的に弾きにくい曲です。
気をつけないと,変なアクセントや抑揚がついてしまって,フレーズが不自然になってしまいます。
淡く夢のような美しさを,演奏しながら堪能したいところですが,
自然にフレーズが奏でられるように,神経を集中させなければなりません。
左手のアルペッジョや下からのトリルの正しい奏法にも注目です。
第24番 ニ短調 アレグロ・アパッショナート,8分の6拍子。
原始的でありながら前衛的な旋律,ペダルベタ踏みによる音響効果,スケールによる上昇と下降,3度のスケールによる世界の崩壊,最低音のD音を連打する最後,最初から最後までドラマティックで悲劇的,24曲からなる壮大な曲集の最後をしめくくるにふさわしい作品です。
ショパンが指示した,ペダルベタ踏みによる音響効果は実際に表現されている演奏は少ないので,貴重な参考演奏資料となったのではないでしょうか。
24曲にわたって,人のもつありとあらゆる感情が次々とあらわれ,ゆさぶられ,最後のD音の連打の場面では,身も心も極限状態に達します。
まるで仏教の修行のようです。
24曲弾き終えたあとに,続けてもう一度第1番から弾いていくと,さらに深く各作品を感じ取ることができます。
2周目に第1番を演奏したときに感じる美しさと儚さは,普段の生活ではなかなか感じ取ることができないものです。
前奏曲集を,2周,3周,・・・10周,と繰り返し演奏することで,あらたな精神的境地にだどりつくかもしれないと,冗談ではなく思います。
今回は以上です!