この記事では,一般にあまり知られていないマイナーな作品については,当サイト管理人の演奏も公開しています。
ぜひ演奏をお聴きになりながら記事をご覧ください!
- ショパン全作品一覧【備考】
- ショパン その他の作品(ピアノ独奏曲)【生前に出版された作品 6曲】
- ショパン その他の作品(ピアノ独奏曲)【ショパンの死後にフォンタナが校訂して出版した作品 4曲】
- ショパン その他の作品(ピアノ独奏曲)【後年に出版された作品 10曲】
- ショパン その他の作品(ピアノ独奏曲)【存在が確認されている作品 2曲】
- ショパン その他の作品(ピアノ独奏曲)【失われた作品 4曲】
- ショパン その他の作品(ピアノ独奏曲)【ショパンの作品であることが疑わしい作品 4曲】
- 「ショパン作品一覧」に掲載することを見送っている作品 7曲
- 「作品一覧」にも「年表」にも記載していない作品 1曲
ショパン全作品一覧【備考】
ショパン全作品一覧【備考】は全ページ同じ内容ですので,一度ご覧いただいた方は
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難易度
作品の演奏難易度というのは客観的に示すのは難しいため,
思い切って主観的に難易度を判定しました。
一般的なテンポで楽譜通り音を鳴らすメカニズムの難易度を,当サイト管理人の主観で判定しています。
メカニズムの難易度が低くても,音楽的に演奏するには高い表現力や構成力が必要な作品もありますが,
ここではメカニズムの難易度のみを判定しています。
バラードやソナタなど演奏時間が長い作品は,難易度を1~2ランク上に設定しています。
人気度
作品の人気度について,きちんと統計をとるのは難しいため,
当サイト管理人の独断で,各作品の人気度を判定しています。
演奏時間
一般的なテンポで演奏したときの,おおよその演奏時間を記載しています。
作品番号
- 作品番号Op.1からOp.65までは,ショパン自身がつけた作品番号です。
- 作品番号Op.66からOp.74までは,ショパンの死後に,フォンナタがつけた作品番号です。
- WN整理番号は,ナショナル・エディション(エキエル版)で付与されている番号です。
- ショパンが生前に出版しなかった作品に番号が付けられています。
旧版と新版で一部番号が異なりますが,新版の番号を掲載しています。 - 作品番号がつけられずにショパンの生前に出版された作品には,Dbop.がつけられています。
- ショパンが生前に出版しなかった作品に番号が付けられています。
- BI整理番号は,モーリス・ブラウンが作成した,作品目録の番号です。
- KK整理番号は,クリスティナ・コピラニスカが,全作品を分類した整理番号です。
- Ⅴa;個人所有などで入手不可能な作品
- Ⅴb;ルドヴィカの作品目録に存在が確認される,失われた作品
- Ⅴc;ショパンの手紙に存在が確認される,失われた作品
- Ⅴd;フォンタナとスターリングの手紙から存在が確認される,失われた作品
- Ⅴe;その他の出典から存在が確認される,失われた作品
- Ⅴf;少年時代の作品
献呈
ショパンの時代の社交界・音楽界では「献呈」という文化がありました。
「献呈」とは作曲家が作品を特定の個人に捧げる行為です。
献呈者の名前は初版楽譜の表紙に明記されます。
お気に入りの作曲家や人気の作曲家の作品の表紙に名前が記載されることは,
大変名誉なことだったでしょう。
作曲家が貴族の保護なしには活動ができなかった時代です。
お世話になっている貴族へ献呈の打診をし,楽譜表紙に名前を入れて,初版楽譜を贈呈する,という貴族とのお付き合いは,昭和時代の日本のお歳暮やお中元のように欠かせないものでした。
ショパンが作品を献呈した献呈者をみると「~公爵」「~令嬢」「~男爵夫人」などと貴族の名前がずらりと並びます。
また,ショパンの時代には音楽家どうしで互いに作品を献呈しあうことで友情を深めるという付き合いもありました。
エチュードOp.10をリストに献呈したり,バラードOp.38をシューマンに献呈したりしています。
「献呈」は作品を出版する際に行われる行為です。
ショパン自身が生前に出版したOp.1からOp.65までの作品以外には,正式には献呈者が存在しないことになります。
しかし,ショパンが生前に出版しなかった作品であっても,特定の人物に贈呈されていることが多いですので,その場合は献呈者として掲載しています。その際は「※正式な献呈ではない」と注釈を入れています。
ショパン その他の作品(ピアノ独奏曲)【生前に出版された作品 6曲】
ボレロ Op.19 BI;81 ハ長調
難易度 【3】音大レベル
人気度 【2】レア作品
演奏時間 約8分30秒
- 作曲;1833年(23才) *1834年(24才)より以前に作曲
- フランス初版;パリ,プレイエル 1835年
- ドイツ初版;ライプツィヒ,C.F.ペータース 1834年
- イギリス初版;ロンドン,C.ウェッセル 1835年
- 献呈;エミリー・ド・フラオー伯爵令嬢
- 自筆譜;行方不明
構成 三部形式
├序奏部 α-β
├主部 A-B-A’
├中間部 C-D-経過部
├再現部 A-B-A’
└コーダ
ボレロといえば,ラヴェルのボレロがよく知られていますが,古くからあるスペインの民族舞踏です。
ボレロのリズムがポロネーズのリズムと似ているため,ショパンのボレロはボレロというよりもポロネーズに近い曲想になっています。
バラードやスケルツォに匹敵する大作で,幻想曲や舟歌同様,ショパンんが相当に力を入れた作品だと思われますが,ショパン特有の霊感があまり感じられない作品です。
タランテラ Op.43 BI;139 変イ長調
難易度 【3】音大レベル
人気度 【3】隠れた名曲
演奏時間 約3分30秒
- 作曲;1841年(31才)
- フランス初版;パリ,E.トルプナ 1841年
- ドイツ初版;ハンブルク,シューベルト 1841年
- イギリス初版;ロンドン,C.ウェッセル 1841年
- 献呈;なし
- 自筆譜;イースト・サセックス,個人所有
構成 三部形式
├序奏
├主部 A-B-C-経過部
├中間部 D-E-D’-F-経過部
├再現部 A-B
└コーダ
タランテラのリズムに載って,たくさんの楽想がふんだんに用いられています。
まさに泉のごとく湧き出るようです。
芸術的感動はあまり感じられませんが,楽しい作品です。
演奏会用アレグロ(アレグロ・ド・コンセール) Op.46 BI;72 イ長調
難易度 【5】最高難易度
人気度 【2】レア作品
演奏時間 約12分
※元々ピアノ協奏曲として作曲されたが,第1楽章のみピアノ独奏曲として完成され出版された。
- 作曲;1832年(22才)~1841年(31才)
- フランス初版;パリ,M.シュレサンジェ 1841年
- ドイツ初版;ライプツィヒ,ブライトコップフ・ウント・ヘルテル 1841年
- イギリス初版;ロンドン,C.ウェッセル 1842年
- 献呈;フリーデリケ・ミューラー嬢
- 自筆譜;ワルシャワ国立図書館
構成 ソナタ形式
├序奏部
├提示部
│├第一主題
│├第二主題
│└経過部
├展開部
├再現部
│└第一主題
└コーダ
元々3番目のピアノ協奏曲として書かれていた作品だったようですが,第1楽章のみ,ピアノ独奏曲として完成され,出版されました。
管弦楽のTuttiにあたる部分がピアノ独奏曲として書かれているのですが,卓越した書法で書かれていて,まるでピアノがオーケストラのように輝かしく響きます。
幻想曲 Op.49 BI;137 ヘ短調
難易度 【4】プロレベル
人気度 【4】名曲・代表作
演奏時間 約13分
- 作曲;1841年(31才)
- フランス初版;パリ,M.シュレサンジェ 1841年
- ドイツ初版;ライプツィヒ,ブライトコップフ・ウント・ヘルテル 1842年
- イギリス初版;ロンドン,C.ウェッセル 1842年
- 献呈;カトリーヌ・ド・スゾ公爵夫人
- 自筆譜;ワルシャワ国立図書
構成 三部形式 *ソナタ形式と捉えることもできる。
├序奏
├主部 A-A’
├中間部
├再現部
└コーダ
バラードやスケルツォとともに,ショパンの作品の中でも重要な傑作です。
「バラード」と名付けられていてもおかしくないほどの傑作ですが,ショパンはバラードもスケルツォも3拍子で書くものと決めていたようで,この作品には「幻想曲」と名付けられました。
作曲当時のピアノの音域不足が原因で,ショパンの苦肉の策がのこっています。
現代のピアノではB♭0音を使用して演奏されています。
子守歌 Op.57 BI;154 変ニ長調
難易度 【3】音大レベル
人気度 【3】隠れた名曲
演奏時間 約4分30秒
- 作曲;1843年(33才) *1844年(34才)かも
- フランス初版;パリ,J.メソニエ 1845年
- ドイツ初版;ライプツィヒ,ブライトコップフ・ウント・ヘルテル 1845年
- イギリス初版;ロンドン,C.ウェッセル 1845年
- 献呈;エリーズ・ガヴァール嬢
- 自筆譜;パリ国立図書館
*スケッチをニューヨーク,レーマン・コレクションが所蔵(ピアポント・モーガン・ライブラリーに寄託)
伴奏が終始おなじ和声を鳴らし続けるのが特徴で,眠りを誘います。
右手旋律の装飾と変奏が見事なので,最後まで聴くものを飽きさせません。
天上界で夢見心地にまどろむような,大変美しい作品です。
舟歌 Op.60 BI;158 嬰ヘ長調
難易度 【4】プロレベル
人気度 【4】名曲・代表作
演奏時間 約9分
- 作曲;1845年(35才)~1846年(36才)
- フランス初版;パリ,ブランデュ 1846年
- ドイツ初版;ライプツィヒ,ブライトコップフ・ウント・ヘルテル 1846年
- イギリス初版;ロンドン,C.ウェッセル 1846年
- 献呈;ド・シュトックハウゼン男爵夫人
- 自筆譜;クラコフ,ヤギエウォ図書館
構成 三部形式
├序奏
├主部 A-B-A’
├中間部 C-C’-D-経過部
├再現部 A’
└コーダ
幻想ポロネーズとともに,ショパン最晩年の傑作です。
天才ショパンが最後に辿り着いた境地です。
ショパンはその生涯のほとんどが,C1からF7までの78鍵のピアノとともにありました。
しかし,晩年になってショパンはC1からA7までの82鍵のピアノと出会っています。
舟歌には,これまで高音の限界だったF7音より半音上の,F♯7音が使われています。
せっかくA7音まで音域の広がったピアノを手にしたショパンですが,体力と気力が急激に衰えます。
1837年以降の作品は小品ばかりで,作品の数も少なくなりました。
音域の広がったピアノが,ショパンの作品の世界をさらに広げることはできませんでした。
ショパン その他の作品(ピアノ独奏曲)【ショパンの死後にフォンタナが校訂して出版した作品 4曲】
葬送行進曲 Op.72 -2 WN;9 BI;20 ハ短調
難易度 【1】アマチュアレベル
人気度 【1】マイナー作品
演奏時間 約7分
- 作曲;1827年(17才) *1826年(16才)かも
- フランス初版;パリ,J.メソニエ 1856年
- ドイツ初版;ベルリン,A.M.シュレジンガー 1855年
- 献呈;なし
- 自筆譜;紛失
*テレフセンの筆写譜をワルシャワ,ショパン協会が所蔵。
作曲の経緯は書き遺されていませんが,1827年4月に妹のエミリアが亡くなっているため,仲の良かった妹の死がきっかけで書かれた作品だと言われています。
ショパンの葬送行進曲というと,後年にかかれたピアノ・ソナタ第2番変ロ短調の第3楽章があまりにも名作なため,現在ではこちらの葬送行進曲は一般にはほとんど知られていない,忘れられた作品となっています。
率直に嘆き悲しむような主部も,儚げで美しい中間部もすばらしく,ワルシャワ時代に書かれた作品の中では特によくできた作品の一つです。
エコセーズ Op.72-3,Op.72-4,Op.72-5
ショパンはワルシャワ時代にエコセーズを何曲か書いていたようですが,現存するのは3曲だけです。
大変短い小品ですが,和声進行や繊細で優美な曲想など,天才ショパンの片鱗が垣間見えます。
エコセーズ Op.72 -3 WN;13-3 BI;12 ニ長調
難易度 【1】アマチュアレベル
人気度 【2】レア作品
演奏時間 約1分
- 作曲;1826年(16才) *1830年(20才)かも。
- フランス初版;パリ,J.メソニエ 1856年
- ドイツ初版;ベルリン,A.M.シュレジンガー 1855年
- 献呈;なし
- 自筆譜;紛失
エコセーズ Op.72 -4 WN;13-1 BI;12 ト長調
難易度 【1】アマチュアレベル
人気度 【2】レア作品
演奏時間 約30秒
- 作曲;1826年(16才) *1830年(20才)かも。
- フランス初版;パリ,J.メソニエ 1856年
- ドイツ初版;ベルリン,A.M.シュレジンガー 1855年
- 献呈;なし
- 自筆譜;紛失
*オスカル・コールベルクの筆写譜をカリフォルニア,スタンフォード大学が所蔵
エコセーズ Op.72 -5 WN;13-2 BI;12 変ニ長調
難易度 【1】アマチュアレベル
人気度 【2】レア作品
演奏時間 約30秒
- 作曲;1826年(16才) *1830年(20才)かも。
- フランス初版;パリ,J.メソニエ 1856年
- ドイツ初版;ベルリン,A.M.シュレジンガー 1855年
- 献呈;なし
- 自筆譜;紛失
*オスカル・コールベルクの筆写譜をカリフォルニア,スタンフォード大学が所蔵
ショパン その他の作品(ピアノ独奏曲)【後年に出版された作品 10曲】
ラルゴ WN;61 BI;109 KK;IVb-5 変ホ長調
難易度 【1】アマチュアレベル
人気度 【1】マイナー作品
演奏時間 約1分30秒
- 作曲;1837年(27才)
- 他国初版;ワルシャワ,ポーランド音楽出版協会 1938年
- 献呈;なし
- 自筆譜;パリ国立図書館
1938年にパリのオークションで ノクターン ハ短調 BI 108 KK IVb-8 とともに発見された作品です。
その後ワルシャワで出版されています。
自筆譜には”パリ,7月6日”とだけ書かれていて,
作曲年には諸説あります。
前奏曲集Op.28に入れられる予定だったという説もあります。
もしもそうなっていたならば,Op.28-19の代わりに前奏曲集に入っていたことになります。
Op.28-19,Op.28-20と2曲連続でコラール風の作品が続くのは,曲集としても面白い流れだったかもしれません。
曲の後半には,ショパンの作品ではめったに書かれることのない,オクターブのトレモロが登場します。
オクターブのトレモロというのは,ショパンの作品には似つかわしくない,稚拙な表現だといえます。
カンタービレ WN;43 BI;84 KK;IVb-6 変ロ長調
難易度 【1】アマチュアレベル
人気度 【1】マイナー作品
演奏時間 約1分
- 作曲;1834年(24才)
- 他国初版;ワルシャワ,ムジカ 1931年
- 献呈;なし
- 自筆譜;紛失
1925年に自筆譜のファクシミリが発刊されたそうですが,現在では自筆譜そのものは失われています。
たった14小節の小品ですが旋律の美しい作品です。
アルバムの一葉「モデラート」 WN;56 BI;151 KK;IVb-12 ホ長調
難易度 【1】アマチュアレベル
人気度 【1】マイナー作品
演奏時間 約2分
- 作曲;1843年(33才)
- 他国初版;ワルシャワ,シフェアト誌。1910年。
さらに,ワルシャワ,ゲベトナー・アンド・ヴォルフから1912年に出版。 - 献呈;アンナ・シュレメティエフ伯爵夫人 ※正式な献呈ではない。
- 自筆譜;紛失
アンナ・シュレメティエフ伯爵夫人のアルバムに記されていた作品なので,『アルバムの一葉』や『アルバムの綴り』などと呼ばれています。
そのアルバムそのものは失われています。
ギャロップ・マルキ WN;59 KK;IVb-13 変イ長調
難易度 【1】アマチュアレベル
人気度 【1】マイナー作品
演奏時間 約1分
- 作曲;1846年(36才)~1847年(37才)
- 献呈;ジョルジュ・サンドの子犬のために ※正式な献呈ではない。
- 自筆譜;パリ,カール・ハンス・シュトラウス夫人
ショパン最晩年の作品で,この頃からショパンの楽想は急速に枯渇し,1847以降はほとんど作曲ができなくなります。
同時期にブーレーや教会音楽など,およそショパンらしくない作品を書いています。
ギャロップ・マルキは同時期に書かれたブーレーとともに,とてもショパンの作品とは思えない稚拙な作品です。
舟歌や幻想ポロネーズなど,最晩年の傑作を書き遺した同時期に,ギャロップ・マルキやブーレーを書いていたというのは興味深くもあり,奇妙な事実です。
「マルキ」はジョルジュ・サンドの愛犬の名前です。
「マルキ」は『小犬のワルツ(子犬のワルツ)』の逸話にも登場します。
中間部に ”partie Dib” と書かれていますが,この “Dib” も愛犬の名前です。
オクターブのカノン BI;129B KK;IVc-1 ヘ短調
※未完成の作品。16小節で途切れている。
難易度 【2】アマチュアトップレベル
人気度 【1】マイナー作品
演奏時間 約1分
- 作曲;1839年(29才)
- 他国初版;ワルシャワ,ショパン年報 1958年
- 献呈;なし
- 自筆譜;リースタル,マリオ・ウジェッリ マリオ・ウジェッリ(骨董商)が個人所有
右手の旋律と左手の旋律が完全に同じになっていて,左手が1小節遅れて右手の旋律と重なります。
対比法的な作品のための習作だと思われますが,ショパン特有の霊感が感じ取れる作品です。
自筆譜は16小節で途切れていて未完なのが残念です。
フーガ BI;144 KK;IVc-2 イ短調
難易度 【2】アマチュアトップレベル
人気度 【1】マイナー作品
演奏時間 約2分30秒
- 作曲;1841年(31才)
- ドイツ初版;ライプツィヒ,ブライトコップフ・ウント・ヘルテル 1898年
- 献呈;なし
- 自筆譜;マジョルカ島のヴァルデモーザ,マリア・フェラ
ショパンは生涯にわたってバッハを敬愛しつづけ,日々の練習にはバッハの平均律クラヴィーア曲集を使っていました。
最晩年のショパンが「フーガを勉強すれば音楽の論理の基本原理を知ることができる」と語ったことが,1849年4月7日のドラクロワの日記に書かれています。
ショパンは,フーガ,もしくはフーガに類する対位法的な作品をいつか書きたいと思っていたことは明らかです。
ショパンが生涯で唯一書き上げたフーガは出版するための作品ではなく,対比法的な作品を書くための習作だと思われます。
2声のフーガで,特別凝った作りにはなっていませんが,習作としてはよくできた作品ではないでしょうか。
ブーレー BI160B
- 作曲;1846年(36才)
- イギリス初版;ロンドン,ショット 1968年
- 献呈;なし
- 自筆譜;行方不明
ジョルジュ・サンドのアルバムから発見された小品です。
ショパン最晩年の作品ですが,同時期に書かれた『ギャロップ・マルキ』とともに,とてもショパンの作品とは思えない稚拙な作品です。
ブーレー BI;160B KK;VIIb-1 ト長調
難易度 【1】アマチュアレベル
人気度 【1】マイナー作品
演奏時間 約30秒
ブーレー BI;160B KK;VIIb-2 イ長調
難易度 【1】アマチュアレベル
人気度 【1】マイナー作品
演奏時間 約30秒
ソステヌート(ワルツ) WN;53 BI;133 KK;IVb-10 変ホ長調
難易度 【1】アマチュアレベル
人気度 【2】レア作品
演奏時間 約2分
- 作曲;1840年(30才)
- イギリス初版;ロンドン,フランシス・デイ・アンド・ハンター 1955年
- 献呈;エミール・ガイヤール
- 自筆譜;パリ音楽院 *「パリ,1840年7月20日」の日付が書かれている。
楽譜でも録音でも,ワルツ集の中に入れられていることが多いですが,ショパンはワルツではなく「ソステヌート」としか書いておらず,形式もワルツの形式にはなっていません。
1952年に個人収集家のコレクションの中から発見されました。
シンプルながら旋律の美しい作品です。
「春」※同名歌曲のピアノ独奏版 Op.74 -2B WN;52a BI;117 ト短調
難易度 【1】アマチュアレベル
人気度 【2】レア作品
演奏時間 約1分
- 作曲;1838年(28才)
- イギリス初版;ロンドン,ショット 1968年
- 献呈;キレレ夫人 ※正式な献呈ではない。
- 自筆譜;ヴロツワフ,オソリスキ図書館
他に,ベルリン,ゲルハルト・シュテンプニックも所蔵。
さらに別に,ロンドン,ホースリー家が個人所有。
「春」はショパン自身がピアノ独奏用の作品も遺していますが,歌曲のピアノ伴奏だけをそのまま抜き取っただけの譜面ですので,厳密には歌曲「春」とピアノ独奏版「春」は同一の作品だと捉えても良いかもしれません。
静寂感ただよう美しい小品です。
「春」はリストもピアノ独奏用の編曲を書いていて,こちらはショパンの原曲のもつ素朴さを保ちながら,伴奏も旋律も音を厚くしてよく響くように編曲されています。
後半部分では複雑で前衛的な和声が用いられています。
ショパン その他の作品(ピアノ独奏曲)【存在が確認されている作品 2曲】
2つの教会音楽
※未出版
- 調性;不明
- 作曲;1846年(36才)
- 献呈;ボーダン・ザレスキとゾフィア・ローゼンガルト(ショパンの弟子)の結婚式のために ※正式な献呈ではない。
- 自筆譜;第2次世界大戦で紛失
*かつてブルボン=パルム家が所有していた。
教会音楽 KK;Va-1 「エアロパンタレオンのための2つの作品」
難易度 【0】不明
人気度 【1】マイナー作品
演奏時間 不明
教会音楽 KK;Va-2 「主よ,来たりませ」
難易度 【0】不明
人気度 【1】マイナー作品
演奏時間 不明
ショパン その他の作品(ピアノ独奏曲)【失われた作品 4曲】
アンダンテ・ドレンテ BI;17B KK;Vb-1 変ロ短調
難易度 【0】不明
人気度 【1】マイナー作品
演奏時間 不明
※ルドヴィカの作品目録第1ページ第6番
- 作曲;1827年(17才)
- 献呈;なし
- 自筆譜;紛失
エコセーズ KK;Vb-9 変ロ長調
難易度 【0】不明
人気度 【1】マイナー作品
演奏時間 不明
※ルドヴィカの作品目録第4ページ第4番
- 作曲;1827年(17才)
- 献呈;なし
- 自筆譜;紛失
エコセーズ KK;Ve-3 変ホ長調
難易度 【0】不明
人気度 【1】マイナー作品
演奏時間 不明
- 作曲年;不明
- 献呈;なし
- 自筆譜;紛失
軍隊行進曲 BI;2 KK;Vd-4
難易度 【0】不明
人気度 【1】マイナー作品
演奏時間 不明
※ショパン7才の作品
※詳細は不明ですが,軍楽隊用の作品の原曲のようです。
- 不明作曲;1817年(7才)
ショパンが7才のとき,生まれて初めて作曲した作品は,
- ポロネーズ ト短調 BI 1
- ポトネーズ 変ロ長調 BI 2
の2曲のポロネーズであることはよく知られています。
しかしショパンが7才のときに書いた作品として記録が残っているのはこの2曲だけではなく,
もう1曲「軍隊行進曲」を作曲したという記録が残っています。
2曲のポロネーズは譜面が遺され出版もされていますが,
「軍隊行進曲」は残念ながら作品に関する情報は完全に失われていて,その調性も分からないほどです。
まだ7才だったショパン少年が,自分が作曲した作品をポーランド軍総司令官コンスタンティン大公にプレゼントしたところ,
大公は軍楽隊用に編曲させてサスキ広場での軍隊行進に使ったとのことです。
こんな話が残っているのに,曲に関する情報は一切失われてしまっています。
7才の少年ショパンが作曲したどんな曲だったのか,気になりますね。
なお,いくつかの資料には,同じ1817年,ショパン7才の作品として「変奏曲」「舞曲」の2曲が記載されています。
この2曲にはKK番号も付与されておらず,調性さえ不明で何も情報がないため,ショパン作品一覧への掲載は見送っています。
ショパン その他の作品(ピアノ独奏曲)【ショパンの作品であることが疑わしい作品 4曲】
2つの小品
- 作曲;1845年(35才)
- 献呈;なし
- 自筆譜;紛失
※ジョルジュ・サンドの筆写譜と思われる譜面をワルシャワのショパン協会が所蔵
前奏曲 KK;Anh.Ia-2 前奏曲 ヘ長調
難易度 【0】不明
人気度 【1】マイナー作品
演奏時間 不明
※「2つの小品」の1つ目。12小節の小品
アンダンティーノ KK;Anh.Ia-3 ニ短調
難易度 【0】不明
人気度 【1】マイナー作品
演奏時間 不明
※「2つの小品」の2つ目。12小節の小品
コントルダンス WN;27 BI;17 KK;Anh.Ia-4 変ト長調
難易度 【1】アマチュアレベル
人気度 【1】マイナー作品
演奏時間 約1分30秒
- 作曲;1830年(20才) *1827年(17才)かも
- 他国初版;ワルシャワ,レオン・イジコフスキ(ファクシミリは1934年出版) 1943年
- 献呈;なし
- 自筆譜;第二次世界大戦で紛失
以前は「ショパンの作品であることが疑わしい作品」とされていましたが,最近ではショパンの作品であるとされる楽譜や資料が増えてきました。
ショパンの作品であることの確証がないため,当サイトでは「ショパンの作品であることが疑わしい作品」としています。
アレグレット WN;36 嬰ヘ長調
※おそらくシャルル・マイヤーの曲
難易度 【2】アマチュアトップレベル
人気度 【1】マイナー作品
演奏時間 約1分
ショパン作曲の「マズルカ」として稀に収録されていた作品が,実はシャルル・マイヤーという作曲家の作品である,ということが判明していたのですが,
最新の研究では少なくとも冒頭の8小節はショパン自身が書いたものだとされています。
エキエル氏はショパン自身が書いたと思われる箇所を抜き出して再構成し,「アレグレット」としてエキエル版のシリーズB5「色々な作品集 Various Compositions」に収録しています。
これも詳細が不明なため,当サイトでは「ショパンの作品であることが疑わしい作品」として扱っています。
「ショパン作品一覧」に掲載することを見送っている作品 7曲
ショパンの生涯-年表には当初から掲載しているものの,
ショパン作品一覧には掲載していない作品があります。
ショパンの手紙などに書かれているものの,その存在が確認できる資料が少ないもの,特にKK番号が割り当てられていない作品になります。
全部で7曲あります。
1817年(ショパン7才)作曲 「変奏曲」「舞曲」
1817年といえば,ショパンが生まれてはじめて作曲した歴史的な年です。
ショパンが生まれてはじめて作曲した曲といえば,
2曲のポロネーズト短調 BI 1 と変ロ長調 BI 3 です。
さらに多くの資料には,同じ1817年の作品として軍隊行進曲 BI 2 が掲載されています。
さらにさらに,いくつかの資料には,同じ1817年の作品として「変奏曲」「舞曲」の2曲が記載されています。
この2曲にはKK番号も付与されておらず,調性さえ不明で,何も情報がありません。
1818年(ショパン8才)作曲「ポロネーズ」
これもいくつかの資料に1818年作曲の作品として掲載されていますが,
KK整理番号もなく,調性さえ不明で何の情報も見つけられない作品です。
多くの資料では,1817年,ショパン7才のときに初めて作曲したあと,
1821年,11才になって,ポロネーズ変イ長調 BI 5 を書くまで,作曲の記録が掲載されていません。
7才で作曲を覚えた少年が11才までまったく作曲をしないというのは不自然です。
おそらく記録にも残らず失われてしまった作品がたくさんあったのではないかと思っています。
そのうちの1曲なのかもしれません。
1825年(ショパン15才)作曲「ワルツ」
この作品も,KK整理番号もなく,調性も不明で一切の情報がありません。
1825年(ショパン15才)作曲 マズルカ ハ長調
この作品は調性が「ハ長調」であることを記載した資料がありますが,
やはりKK整理番号もなく,詳細は不明です。
1826年(ショパン16才)作曲「マズルカ(マズレック)」
1827年1月8日付けのショパンからヤン・ビャウォブウォツキへの手紙の中に書かれている作品です。
当サイト管理人は,時期的にマズルカ ト長調 BI 16 のことではないかと考えています。
しかし,BI 16 とは別に,調性不明の作品として掲載されている資料がいくつかあります。
1830年(ショパン20才)作曲「レント」
これも詳細は一切不明です。
「作品一覧」にも「年表」にも記載していない作品 1曲
ここまで記事内で紹介した作品は,ショパン作品一覧またはショパンの生涯-年表のいずれかには記載されています。
しかし,どちらにも掲載していない作品が一つだけあります。
1825年(ショパン15才)作曲「ポロネーズ」
1825年にヤン・ビャウォブウォツキ宛の手紙の中に「ロッシーニの『セヴィリアの理髪師』をもとにして新しいポロネーズを書いた」とあります。
ポロネーズ BI 13『別れのポロネーズ』の中間部ではロッシーニのアリアが使われていますので,
この曲のことかと思われます。
しかし,ショパンが『別れのポロネーズ』で使ったのは『セヴィリアの理髪師』ではなくて,『泥棒かささぎ』のアリアでした。
そうなると,『泥棒かささぎ』を使った『別れのポロネーズ』の他に,『セヴィリアの理髪師』を使った別のポロネーズがあったのだろう,ということになります。
多くの資料で,『別れのポロネーズ』以外にポロネーズがもう1曲あると記載されています。
しかし,当サイト管理人は,やはりこの手紙に出てくるポロネーズは『別れのポロネーズ』のことだと考えています。
今回は以上です!